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第34章 【食べたのだあれ。2】

『口でされるの嫌いな男なんかいないよ』

昨夜の麗さまの言葉が甦った。好きな子が自分に奉仕してくれている姿だけでも興奮する、と。

『流星なんか大好きだと思ったけど』

わたしも同じ意見。だから断られるなんて思わなかった。昨夜のわたしの失態(!)は伝わっていないようだし…もしかして気を遣ってくれてるのかな。

「わ、わたしなら大丈夫で」
「…いやマジでしなくていーから」
「…。でも、わたしだって…!」

予想通りの即断。しかし今は、その中にも僅かな違和感がある。それがどうしても気にかかり、自分でも驚くほど食い下がった。

「…あのな、未結な、"しなくていい"ってのは "するな"ってことなの。察しろよ」
「でも!」

苛立ちを露にする彼。条件反射で体は萎縮してしまう。普段ならここで折れてしまうけど…確信めいたものを抱いた今は負けなかった。

「嫌なんだよ、口でされんの」
「!」

吐き捨てられた真実。驚きと共に頭をよぎったのは、再び麗さまの言葉。彼はこうも言ってた。口でされるのが嫌いな男がいたとしたら──

『そいつ、宇宙人だよ』

…目の前に宇宙人がいた。


「つーか……けど」
「えっ」

今なんて?無意識に漏らされただろう呟きを聞き逃さなかった。胡座をかく彼に飛び付き顔を覗き込む。

「〰〰だから、ねーの!27年生きてきて俺、口でされたことなんて、一回も!」
「…。どうして…?」
「だだだだっておまえ、急所中の急所だよ?!そんなん口に突っ込むとか意味わかんねーし」

動揺が顕著になってきてる。表情に現れてる。

彼は嘘をつかない。違う、つけない。
『嫌い』じゃない。『怖い』んだ…!


…どうしよう。わたし今、すごく興奮してる。

昨夜の麗さまの気持ちがわかった。
好きな人の『はじめて』って…すごく欲しい。
それに今の流星さまは…かわいい。

「…最優先されるのは、わたしのきもち…なんですよね?」

体の奥が疼く。どうしよう。止まらない。

「します。わたしが、したいので」
「…だからやめろって言」
「わたしが"やめて"て言ったとき、やめませんでしたよね」

四つん這いの体勢になり、すっかり萎えてしまったそれにそっと触れる。ビクリと全身を震わせた彼を見上げた。

「おしおきです」
「…!」

2人きりの闇の中。互いがはっきり認識した。
立場は逆転したのだ。
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