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BeLoved.
第35章 【hey my friend.】

目的地まであともう少しというところで、バッグの中の携帯が震え始めた。…振動が長い。電話だ。きっと流星さまからの折り返しだろう。

「課長のばかー!文句ゆーならお茶なんかテメーれ入えろーい!」
「ゆ、紫、声おっきいよ…」

しかし紫の対応に追われて受けられない。
とにかく通行人から向けられる好奇の視線が痛い。目的地まではあの角を曲がればすぐだ。辿り着くことを優先したわたしは着信を諦めた。…携帯はまだ震えている。

「未結ー、きいれうろー?」
「はいはい、聞いてるから…あれっ?」

なんとか見えてきた待ち合わせ場所。来たときと同じ交差点。その路肩に停められているのは真っ黒なSUV…ではなかった。
同じSUVだけど、車が違う。色も白。でも見覚えがあるその車体にもたれ、スマホに目を落としていたのは…麗さまだった。

「ぇ…どうして?」
「おかえり」

わたしの声に彼は顔を上げ、スマホをポケットに入れた。
同時にわたしのバッグの中も静かになった。着信は麗さまからだったようだ。…結果的に無視してしまったことをお詫びした。そして、本当なら来てくれる筈だった方は…

「ボンクラ寝てた。迎えは?って蹴ったくったけど、起きなかったの」

お仕事を終え帰宅した麗さまが見たものは、リビングのソファで熟睡している流星さまの姿だったそうだ…
その光景が目に浮かび、苦笑してしまった。最近睡眠不足が続いていたもんね、流星さま…。

「麗さまだってお疲れなのにすみません…ありがとうございます」
「大丈夫だよ。で、その子が今日の?」

彼の視線はわたしから、わたしの真横。どこからどう見ても、立派な酔っ払いである紫へ。本当はもっときちんとしてる美人なんです…。

「そう…あの、紫ちゃんです!飲みすぎちゃ」
「未結っ!この人だえ?!ちょーイケメンらんらけど!」

わたしの言葉を遮り放たれた黄色い声。眠たかったんじゃ…あ、紫は面食いだったっけ…目がキラキラ輝いてる。…わかりやすいなぁ…。
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