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BeLoved.
第35章 【hey my friend.】
「え、えっと…あのね…」
「あ、この人が彼氏れしょ?!」
元気で素直な元々の性格にお酒の力が加わり、今の紫は流星さまの時よりも賑やかだ。
「もー未結みずくさーい!おしえれよー!」
「だから…、その…」
まさか一日に二回も同じ状況で悩まされるとは思わなかった。
流星さま同様麗さまも『ご主人さまのひとり』だ。二人とも決して『彼氏』じゃない。…『好きな人』ではあるけれど。
「きゃー!レ○サス!ぴかぴかー!」
なんて思っていたら、紫がいつの間にかわたしから離れ…あろうことか車体にベタベタと触れている!一瞬で血の気が引いた。
「ゆ紫っ!?やめて!?」
「いいよ。大丈夫」
裏返った声で叫ぶわたしとは真逆に静かな声の麗さま。それが逆に怖い。絶対、気に障ってしまったはずだ。
「はじめまして、紫ちゃん。村上麗です。おうちまで送るね」
…杞憂?麗さまの表情も声も穏やかだった。
後部座席のドアを開けてくれた彼に、まずは未結がと優しく促され。右手右足を一緒に動かしてしまいそうな、ぎこちない動きで乗り込む。
その際ちらりと見上げたけど…やはり彼に変化はない。大丈夫だったのかな?でも麗さま(外では)表情に出さないの得意だからなぁ…
「っほら紫、こっち…」
奥の方へ異動し、紫を招き入れるため入ってきた方を振り向くと…
「ねー彼氏、いつもどんなセックスしてんの?ちゃんと未結のこと満足させてるー?」
「ゆかりー!」
ドアを開け待っていてくれている麗さまを見上げ、紫がにこにこしながらとんでもない質問を投げ掛けていた。
今度こそダメだ!
「うるせぇ。さっさと乗れ」
うん、これぐらいの言葉は放たれるかもしれない。…うん?何なのこの既視感…しかし。
「どうだろうね。足元気を付けてね」
またまた予想に反し、穏やかな声と表情。
それは…わたしに見せるときのような、優しい笑顔。
一瞬だけ、胸がツンとした。
「あー、笑ってごまかすー?さては自信無いなー?」
「いい加減にしなさいってば!」
その笑顔に気を良くしたのか、紫はどんどん馴れ馴れしい態度になっていく。
麗さまの表情は変わらなかったけど、わたしが限界。
彼女の腕を引っ張って強引に車内に引き込み、ドアを閉めたのだった。