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BeLoved.
第35章 【hey my friend.】


「その子、一人暮らしなの?」

困惑しているところに続けられた問い。
…そうだ思い出した!確か紫は…

「っ弟さんと一緒です!年子で、大学生の!」
「そいつ今、家にいる?」

紫の家は2階の端。車窓を伝う雨垂れの隙間からぎりぎり見て取れた先の部屋の窓は…明るかった。よかった、弟さん、居るみたい。お迎えに来てもらえばいいんだよね。

「連絡してみますね!紫、携帯貸し……あ」

希望が虚しく消えていく。そうだった。彼女の携帯は、バッテリー切れなんだった。わたしは弟さんの連絡先を知らない。

──やっぱりわたしが連れていこう。決意し再び紫に声をかけようとすると、またもや麗さまからの問い。

「部屋どこ?」
「え?あ、2階の…あそこです…けど」
「あれね。わかった。行こう」

指差した先を確認したあと、麗さまはわたしの返事を待たず雨の中車を降りた。すぐに紫側のドアが開く。

「ごめんね、触るよ」
「むにゃっ?!」

上体を車内に乗り込ませた麗さまは、紫の背中と膝裏に手を差し込み自分の方へ引き寄せた。

「…んー…いいにおーい…」

そう呟いた紫は、彼の首に両腕を回すと甘えるように抱きつき頬をすり寄せた。…もぅ、寝ぼけちゃって!
……気のせいかな。紫の胸元がさっきよりはだけて…谷間が見えてる。でも…なに?なんで?

「俺この子抱えてくから。その辺に傘あるよね?未結それ差して一緒に来て」
「え?」

さも当たり前と言わんばかりの反応。
あぁ…そういうことか…。今の状況ではきっとそれが最善策だ。

一緒に来てと言うのも当然。弟さんに事情を伝えなきゃだし…何より今は深夜。人通りもないし、小雨とはいえ視界も悪い。
こんな中にわたしを置いていくわけにはいかない。麗さまならそうやって気遣ってくれる。そう思ったのに。

「早くして。この子濡れちゃう」

彼の配慮は彼女へのものだった。
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