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BeLoved.
第35章 【hey my friend.】

──どれくらい経ったんだろうか。

雨は通り雨だったようですぐに止み、外は静かだ。ハンカチを手にしたままシートに凭れ、雨垂れをぼうっと眺めていた時だった。

「──未結!!」
「ひぁっ?!」

突然わたしの席のドアが開けられた。直後響いたのは…麗さまの声。
──ロックを忘れてた!言い付けを思い出し慌てた頃にはもう遅い。難なく開いてしまったドアの先には戻ってきた彼がいた。…怒ってる!

「まさかと思ったらこれだ。…だから一緒に来いっ て言ったんだよ。……間抜けもいい加減にしろ!」

彼らしからぬ剣幕と共に、拳が運転席のヘッドレストに叩き付けられた。衝撃と鈍い音に体が強張る。

紫にはあんなに優しかったのに、どうしてわたしにはこんなに…?それよりも彼の気迫。響く怒声。こわい、こわい!!
身を縮こませ俯き、ひたすら謝罪の言葉を口にすることしかできなかった。「ごめんなさい、ごめんなさい」と。


「…何もなかった?大丈夫?」

少しの間の後、そう尋ねてきた声はもう穏やかなものだ。もちろん、なのか幸いなのか。待っている間、何も起こりはしなかった。

モヤモヤした嫌な気持ちが、自分の中で募っただけだ。わたしは震える声で弱々しく「はい」とだけ答えた。彼が小さく息をついたのが聞こえる。

「──なら良かった。ごめんね、大声出して。でも本当に危ないんだから、こんなこと今回限りにしてね」
「…すみませんでした」
「約束だよ。…鍵開いてたのは何で?外で吐いた?」
「…違います…、紫…ハンカチ落として…、それ…洗って返そうと思って…、だから... …」
「わかった。…おいで」

手を引かれるまま一旦車を降り、助手席に座り直す。
車は静かに走り出し、帰路へついた。
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