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BeLoved.
第36章 【暴走】
洗面所のドアを開け、すぐ脇のスイッチを押し明かりをつけた。
一瞬で照らし出される室内。壁に始まり、家具も家電もすべて白で統一されているからか、余計に眩しく感じられた。
手洗い場正面の壁には、室内全体が写りこみそうな大きな鏡。
その前に立ち、コップに満たした水を飲み干したあと…自分の姿を見た。
髪は乱れてるし、顔もねぼけて…あれ、ちょっとむくんでる?夕飯にお塩使いすぎちゃったかな。思わず苦笑した。──そして、呟く。
「…もう半年かぁ…」
今は10月。わたしが彼らとここで暮らすようになってから、もうそれだけ経っていた。
その早さにただただ驚くばかりだ。大変なことも多いけど…楽しくて、愛されて、幸せで。毎日が本当にあっという間に過ぎていく。
「…、あ」
思いに耽っていたら、玄関ドアの開閉音が聞こえた。
静かな足音がこちらに向かってくる。
「帰ってきた…っ」
はやる気持ちを押さえ、コップを元の位置に戻し廊下にひょっこりと顔を出した。
「流星さまっ、おかえりなさい」
「っ、未結?」
遅い帰宅を果たしたもう一人のご主人さまを笑顔でお迎え。
疲れを少しでも労いたいから。
わたしの出現は予想外だったらしい流星さまは、驚いた表情を浮かべ…すぐに嬉しそうな口調で言った。
「待っててくれたんだ?」
「…あ…えっと…」
その素直すぎる反応に、わたしは馬鹿正直に躊躇してしまった。意識していた訳じゃなく、偶然だったから。
言葉に詰まり俯いた頭上から、突然冷めた声が浴びせられた。
「…あぁ。おまえ、ヤった後?」
「!」
顔を上げた。
視線の先の彼は…ほんの2秒前のにこやかさが嘘のような、険しく苛立った表情。
きちんと絞められていたネクタイも、煩わしそうに緩められた。
「っあー、ムカついてきた。責任取って」
「せ、責任て、なんの…」
洗面所に追い立てられ、対峙したまま彼は後ろ手にドアを閉めた。…逃げ場がない。
「…俺今クソ疲れてんの。頭も痛てーんだよ。そこに追い討ちかけてくれたのに対して」