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BeLoved.
第36章 【暴走】
「一服させて」
流星さまは床に胡座をかいて座り、洗濯機にもたれた。
懐から取り出した煙草を一本くわえ火を点けて。ため息と共に紫煙を吐き出すその表情は、垂れた前髪に隠れて見て取ることはできない。
「……」
手首のアザに視線を落とし、ついさっき…自身の身に起きたことを思い起こした。
──流星さまは明るく朗らかで、とても優しい。
──でも本当の彼は強引で冷酷で、とても怖い。
──そう、怖い。彼は怖い人なのだ。
彼は自分の思いのままに突き進める。
自分自身の感情こそがすべての基準。
そこに相手の気持ちなど微塵もない。
わたしの気持ちなんて関係ないんだ。
心中は暗さに支配された。
「未結」
呼び掛けで我に帰る。
「風呂入ろーぜ。洗ってやるから」
「あ……」
「離れたくねーし」
ああ、でも。でも……
こんなにもこの人はわたしを求めている。
こんなにもこの人はわたしを欲している。
もっと求めて。もっと。
あなたが壊れるほどに。
そんな感情を抱いているのも事実だった。
何を言っているの?正気なの?
わたしは…うん……きっともう
こわれてしまったんだ…
「…ガタガタうるせぇんだけど」
その声が耳に飛び込んできた瞬間。
呼吸が止まり全身が凍りついた。
声の主なんか一人しかいない。
「何やってんの」
恐る恐る振り返る。目に入ったのは開け放たれたドア。そこに…今夜のご主人さまが…麗さまが、目を擦りながら立っていた。