この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
BeLoved.
第36章 【暴走】
「セックスしてたんだよ」
判んだろ。流星さまは嘲笑混じりに返した。けれどそんなこと麗さまにはとっくに伝わっている。その上での『何をしているのか』だ。察しの悪いわたしにだってわかる。
「テメーのはオナニーだろ」
麗さまが言い捨てた声は普段と変わらない。…ただ、寝起きのためか眼鏡は無く、はっきり見てとれたその目付きは…険しかった。
強すぎる光に弱い彼の瞳にとって、この場所は眩し過ぎるからだろう。…ああ、そうであって欲しい。
本当はそうじゃないことなんて判ってるのに。
麗さまがご主人さまの日に、
流星さまがわたしを抱く。
麗さまの気に障らないはずがない。
ましてや今回は二度目だ。
もう見逃してはくれないはず。
とても麗さまの方を見ていられなくて、顔を背け俯いた。…震えてる。心臓の鼓動が激しくなっていくのもわかる。自由になった手で、乱されたままの服の胸元をきゅっと握った。…手首のアザが見つからないよう、意識して。
「…流星お前、何か言うことねぇの」
「は?──ああ。未結ごめんな。激し過ぎた」
「ぇ、あ…っ?!わたし…」
違う。麗さまが言ってるのはそんな事じゃない。口にするより早く、わたしの頭には流星さまの手が乗せられた。大きな手。やわやわと撫でられこめかみに口づけられた。でもわたしは動けない。
少しの間のあと麗さまは再び流星さまに問いかけた。
「うん。で?俺には」
「なんでお前?お前出すもん出して未結ほっぽって、今まで呑気に寝てたんだろ」
「流星さま…っ!」
流星さまの返答は火に油を注ぐもの。
もうだめだ。完全に麗さまの逆鱗に触れてしまった。わたしは目を閉じ身構えた。
しかし背後から聞こえたのは怒号でも恫喝でもなく…小さなため息が、ひとつ。
「お前精子と一緒に脳みそもブチまけてるもんな」
もういい。──諦めと、軽蔑を込めた呟き。…怒っていないの?すると麗さまは、今度はわたしを呼んだ。感情のない冷めた声で「未結ちゃん」と。
「おいで」
「は…はい…」
拒否権はない。痛む体に鞭打ってヨロヨロと立ち上がり、麗さまの方を向いた…直後だった。
「あ、そーだ。麗ー」
わたしの背後にいる流星さまが、何故か麗さまを呼び止めたのだ。
瞬時にものすごく嫌な予感が頭をよぎる。
「未結、お前のこといらねーって」