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BeLoved.
第36章 【暴走】
翌日…と言うか、正確には同じ日なんだけど。
流星さまはすっかり普段通り。起床時間に寝室へ行ったとき求められたけど…お断りした。とてもそんな気分じゃない。
さすがに彼も察してか、ご機嫌斜めになる事なくその後普通に朝食を済ませ出勤していった。
鏡は流星さまが手配して下さった業者さんのおかげで、昼過ぎには元通り。破片も残らず回収してくれた。…そして今はもう夕陽が差し込む時間帯。わたしは台所で夕食の準備を終えようとしていた。
…実はあれから麗さまの姿を見ていない。
昨夜は結局どちらの部屋に行くことも出来ず、一人で入浴したあと自室に籠った。
今朝、朝食の準備を整え呼びに行ったときには麗さまの部屋はもぬけの殻。いつ出て行ったんだろう。車もなかった。携帯も繋がらない。
昨夜の様子。不安が頭を過る。その時だった。
「あー腹へった」
「!!れれれっ…麗、さま!?」
突然、何の前触れもなしに麗さまが台所脇の廊下を通過したのだ。全く予想なんかしていなかったから、素っ頓狂な声を上げてしまう。しかし彼は歩みを止めない。
「ただいま。夕飯できてる?」
「でっできてます!できてますけど…あの…」
聞きたい事がありすぎて逆に言葉が出ない。しどろもどろのわたしを尻目に彼はさっさとダイニングの自席につき、取り出したスマホを構い始めた。
その様子に普段と変わりは…ない。
「…お、お待たせしました…」
今が10月でよかった。長袖を着れるおかげで、昨夜残された手首の傷痕を隠せる。
それでも緊張感に包まれながら、テーブルにおかずを並べていく。それに気付き、脇にスマホを伏せて置いた彼の右手が目に留まった。
その甲には……彼に残された、昨夜の傷痕。
「いただきます。──ねえ、携帯鳴ってるよ」
「えっ?…あ…」
台所内の食器棚に置きっぱなしだった携帯。確かに、震動音が微かだけど聞こえる。駆け寄り手に取って見ると…流星さまからだった。…なぜか一抹の不安が過る。
黙々と食事を続ける麗さまに背を向け、通話ボタンを押した。
「も…、もしもし…?」