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BeLoved.
第36章 【暴走】
今の彼はいつもの優しい『麗さま』じゃない。
自分の目で見て耳で聞いたものしか信じない
そして気に障るものに容赦はしない『麗』だ。
一糸纏わぬ姿でベッドに押し倒された今
この先に待つ未来なんかひとつしかない。
抱かれる。わたしの中の『彼』が
彼によって「塗り潰される」まで。
乱暴にされるかもしれない。
激しくされるかもしれない。
『彼』のように、彼の中の衝動のままに
『彼』の香りで満たされたこのベッドで──
背中が沈み光が遮られる。…覆い被さられた。
普段とは全く違う緊張が全身を支配する。
「あ…」
肌に触れたのは……いつもの優しい手だった。
腰と背に添えられたそれは、わたしをそっと俯せにさせた。
…より近くなる『彼』の香り。そして──…
「──んぅっ!」
掻き分けられた髪の隙間から、うなじに口付けが落とされた。たったそれだけなのに、身体中にゾクゾクしたものが広がり堪らず声は上がってしまう。
けれどそんなものに構うことなく、彼の唇は口付けを落とし続ける。何度も、何度も。
「…ん、ゃ…っ…んん…っ」
口付けは、跡を残すような強さはない、啄むようなもの。しかし、弱い場所に繰り返し繰り返し与えられるそれは、わたしの中の疼きを呼び起こしていった。…こんな時でさえも。
「…やっ、…ぁ…っ…」
くすぐったさと自らの浅ましさに抗いたくて、身を捩りたくても。背中に広がるほのかな温もりはそれを決して許さない。
その温もりは彼が覆い被さり密着している証。シーツを握りしめるわたしの手にも…彼の手はしっかり重ねられていた。
──逃げられない。
「──ひっ!」
突然、生暖かいものが耳の後ろを這った。それは…舌。唾液だけでなく彼の意思も纏ったそれは、耳の後ろをつたい、耳朶、耳介、筋と、ねっとりと移動していく。…よりわたしに近づき、入り込むために。
「──やあぁ…っ」
案の定、舌先は耳孔に入り込んだ。ぴちゃぴちゃと厭らしい水音が大音量で響き…まるで頭の中まで侵されている様な錯覚に陥ってしまう。
「あ…ぅ、ん……っ」
ぴくん、ぴくん、と震える四肢。熱くなる吐息。涙が滲む瞳。震える全身。それらは嫌悪感から?…ううん……違う。──感じてる。
『気持ちいいこと』を知ってしまったこの体は、悦んでしまっている。こんな時でさえも。