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第37章 【暴走の果て】

羅々さまのご自宅は、M区の中心街にそびえ立つタワーマンションの32階。ここでご夫婦二人で生活されている。

「お邪魔します…」

促されるままくぐった玄関は上品な香りで満たされ。集合住宅だというのに天井は高く、廊下も広くて長い。さりげなく飾られているお花も高価そうなものだし…恐縮しちゃうな…

「あの…旦那さまは?」
「海外出張中。来週一杯あたし一人よ」

だから未結ちゃんが来てくれて嬉しい♪と羅々さまは明るくキッチンから返してくれた。頃合いだからとお昼ご飯の準備をしているそうだ!
慌てて交代を申し出たけど「今はお客様でいて」とこれまたやんわりと窘められ。更にはリビングで寛いでいてと言われてしまった。

恐縮しつつも、やはり体は少し辛い。お言葉に甘えることにした。

──

パン、サラダ、キッシュ、スープ…目の前に並べられた料理はどれも美味しそうで、美味しくて。「沢山食べてね」の言葉通りにするわたしを横で眺めながら、羅々さまは優雅にシャンパングラスを傾けた(休日の昼酒が趣味らしい)

「そうだ、これ見て!麗たちの」

側の棚から何かを取り出した羅々さまの手にはハードカバーの本があった。それは…そう。

「、アルバム!ですかっ?」
「そ。えーと…小学生からね」

開かれたページには、入学式と書かれた大きな看板を挟んで子供が二人並んで立つ写真。真新しい制服の胸元には、入学を祝福する紅白の花飾り。

向かって左側。真っ黒い髪のこの子は…うん、流星さまだ。 今の姿からは想像できない程ちっちゃくて、華奢な姿。くりくりの目が可愛らしい。

ふわふわの頬や白くて細い脚には、いくつもの青アザや絆創膏が。やんちゃだったのかな?思わず顔がほころぶ。

その隣にいるのは麗さま……わくわくしながら視線をずらした矢先。硬直した。

幼さと線の細さが相まって、本当に女の子のような外見は…予想通り。しかしその髪は、見事な金色だったのだ。

「それ、前の晩にママがやったの。"お洒落しなきゃ"って。イカレてるでしょ?」
「……」
「麗はママのお人形さんだったからね。末っ子だし、一番ママ似だったから」
「……」
「まそーなったのもパパが悪いんだけどね…。あの人、釣った魚に餌やり過ぎて殺しちゃうタイプだったから…」

麗もそこ似ちゃって、と。お酒のせいか普段以上に饒舌な羅々さまは眉間を寄せたのだった。
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