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BeLoved.
第37章 【暴走の果て】
「──で、これがあたし」
次に指し示されたのは、下の段に貼られた写真。麗さまの隣にいるのは、ツインテールにされたくるくるの髪が愛らしい女の子。
「わあ…っ、かわい……あれっ?」
その子の胸元につけられた、長方形の名札に違和感を覚えた。
『四年二組 村上 百合』
むらかみ……ゆり。
え?この子、羅々さまじゃないの?
改めてまじまじと見つめたけど…うん、これは羅々さまだ。間違いない。
羅々さまはわたしの様子に気づき、口にしていたグラスをテーブルに置いた。
「未結ちゃん麗から聞いてない?あたしね、一回改名してるの」
「…お名前変えてる…んですか?」
羅々さまはご結婚されているから、現在の名字は旦那様のもの。そうじゃなくて、下のお名前を変えられたというのだ。
「そう。それ、『ゆり』じゃなくてね…『りりい』って読むの!」
「……。えっ?……り、りりい??」
「そ。『むらかみりりい』。無理でしょー?これまたママが付けたんだけどね、もー散っ々だったわよ」
正しく読まれない、呼ばれない。
時にはバカにされ、からかわれ。
とにかく不便で不快だった、と。
当時のことを思い出しているのか。羅々さまは笑ってはいるけど、少し影のある暗い表情。
改名を申し立てできるのは15歳。
それ以前から自分で色々調べ準備を進め、誕生日を迎えた早々に行動したそうだ。
悩んだままにせず、自力で解決に向かわせる実行力。さすがだなあ…。
「ちなみに"羅々"はね、キ●ララからよ♪」
手にしたスマホケースに描かれていたのは、お星さまと小さな双子のキャラクター。今も昔も大好きなの、と見せてくれた。
「それに、この子達いつも一緒にいるじゃない?あたしにもそんな相手が現れますようにって、願かけてたの」
「……」
「うちは親…特に母が変わり者だったからね。兄貴もあたしも麗も苦労したわー」
暗い話してごめんね。そう言って羅々さまは屈託なく笑った。でも笑顔になる直前。一瞬だけ浮かんだ暗く冷めた瞳は。彼女の弟がいつか見せたものと同じものだった。