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BeLoved.
第37章 【暴走の果て】
──さて。こちらで過ごすようになって、早くも五日が経った。
初日はあの昼食のあと、買物に連れ出して頂いて。着の身着のままで来てしまったわたしのために、羅々さまは服やら寝間着やら……下着やらを見繕って下さった。
それだけじゃなく、基礎化粧品やシャンプーなんかの細々した日用品まで揃えてくれて。
しかも、気付いた時にはいつも会計は済んでいて。慌てて払おうすると「麗に請求するから大丈夫」との砕けた返事。たおやかな笑顔とは真逆に、頑として受け取っては頂けなかった。
その代わり…といってはなんだけど、わたしは本来の業務──つまり、家政婦業をさせて頂くことになった(なった、というか頼み込んだ。居てもたってもいられなくて)。
元々羅々さまご夫婦は共働きだし、しかもお互いに激務。平日の家事は通いの家政婦…つまり、わたしのおばあちゃんに長い間任せてくれていた。
おばあちゃん亡きあとは、何となく代わりの人を見付けられず、ご夫婦のどちらかが週末にまとめて掃除や洗濯をこなしていたそうだ。
ならば、せめて出来ることをさせて頂きたい。最初は渋っていた羅々さまだったけど、最後には「無理は駄目よ」と受け入れて下さった。
──それに、動いていた方がいいんだ。
変なことを考えずに済むから。
鳴らない携帯と、日に日に薄くなっていく
至るところに残された所有の証と手首の痕。
それはまるですべての『終わり』を
暗示しているように思えてしまって。
「……」
終わる?
…それも…それでもいいのかもしれない。
このままわたしは羅々さまのおうちで
おばあちゃんの代わりに働かせて頂いて──
彼らのもとにはもう二度と、戻らない方が──
──ごめん、未結──
「──!」
だめだ。
逸らそうとすればするほど意識する。
仕事をすればするほど思い出す。彼らのこと。
会いたい。会って、話をしたい。
そうでないと、なんだろう。そう……本当に
このまま何もかも終わってしまいそう──ううん
終わってしまうんだ。
そんなの……いやだ。
「もしもし…」
家中を磨きあげて。お夕飯も作り置いて。
全てを元通りにして。
意を決して、わたしはその人に電話を掛けた。