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第39章 【罪と罰。2】

「いーんだって。目の前でいきなり血ゲロ吐かれてぶっ倒れられたんだ。そりゃ焦んだろ」

ベッドの下から引き出したパイプ椅子に腰掛けた流星さまは、笑いながら優しくフォローしてくれた。
そしてベッド脇の手すりに腕を乗せ麗さまの方を向き、これまた楽しそうに笑いながら揶揄し始めた。

「麗お前さー、拾い食いでもしたんじゃねーの?便所血だらけで軽くホラーだったわ」
「流星うるせぇ。テメーもう用無ぇから帰れ」

案の定、心底煩わしそうに麗さまは言い捨てた。スマホを手にしたまま寝返りを打ち、流星さまに背を向けてしまう。
流石に清掃業者さんを呼んでもらったけど、血まみれのトイレは確かに惨状だったなあ…

「お?何だお前、保証人様にその言い種か」
「条件満たしてたのがたまたまテメーだったんだよ。役に立たせてやったんだから感謝しろ」
「なー?聞いたろ、未結。大丈夫だよ。こんだけ憎まれ口叩けんだし、元々血の気も多いから、吐いて失くした分もすぐ回復するって。そもそもこのバカ、殺したって死なねーし。なー麗。なー」
「…あぁ流星マジうるせぇ。消えろボンクラ」

言い種的にはどっちもどっちな気がしないでもないんだけど…麗さま、余程気が立っているんだなぁ。普段以上に言葉が刺だらけだ。

入院保証人の条件。この病院の場合は21歳以上で定職があり、別居で生計が別の人間、という厳しいものだった(わたしは二十歳なので不可)。強制ではないにも関わらず引き受けてくれたんだから、もう少し感謝の念があっても……ん?別居??

「わたしたち、一緒に住んでますよっ?」

疑問が先走り、つい二人の会話に割り込んでしまった。麗さまはスマホから目線をわたしに移し、 先程とは打って変わった穏やかな声と表情で答えてくれた。

「俺ら住所までは移してないんだよ、未結」
「え?…でも」
「その辺はまた今度詳しく教えるね。…ダメだスマホ死んだ」

操作中に画面が暗転してしまったらしいそれに向かい、ぶつぶつ悪態をつく麗さま。
それを見て、なんだか確かに流星さまの言葉通りな気がしてきた。

怒るのだって、エネルギーいるもんね。
瀕死の状態を目の当たりにしてしまったせいか、今の麗さまの姿は、わたしを安心させてくれた。
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