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BeLoved.
第39章 【罪と罰。2】
「むしろ今俺の方がやべーよ。この辺すげー痛てーもん」
左手で右肩を掴み、首を左右に傾けながら流星さまはそう言った。
「あ…流星さまもお疲れですものね、肩こり、ひどいんですか?」
「違う、幽霊の方。この部屋ちょっとやべー奴いるぞ。外から覗いてるおっさんもいるし。やっぱ病院はなー。どーしてもなー」
一瞬で凍り付いた空気。ここ、13階ですよ…
その時だった。風もないのに流星さまの髪がふわりと揺れて、女の人の笑い声が微かに聞こえ…ないないないない!気のせいだから!!
「やややめてくださいっ!わた、わたわたわたしここ今夜泊まるんですよっ?!」
「えっ、なに。おまえ泊まんの?」
涙目なわたしの抗議はそっちのけで、流星さまは驚いた表情になった。
「…当たり前だろ。飯食えねぇ酒飲めねぇ煙草吸えねぇ仕事行けねぇ、挙げ句の果てに未結はいねぇって、何重苦だと思ってんだよ。俺無理だもん」
対称的に、至極当然と言った表情の麗さま。仕方ないとはいえ、あんなに愛用していたのにもはや彼にとって用無しとなったスマホは、脇のテーブルに捨てられるように置かれた。
「部外者ダメなんじゃねーの?普通」
「許可取った」
「誰の。どーやって」
「教えない」
「…。まーいっか。俺今夜帰れねーし、一人にしとくよりマシか…」
ふぅ、と息をついたあと、流星さまは立ち上がり、髪を直し襟を正すと、懐にしまっていた眼鏡をかけ、お仕事モードに戻った。
「じゃー俺行くわ。未結、またな」
「あっ…、ありがとうございました、流星さ」
「流星ー、俺の部屋からiP◯d持って来て。暇だからハッ◯ーツリーフレンズ一気見する」
「めんどくせーからやだ」
別れ際まで成される相変わらずの会話に、苦笑した時だった。
ふいに部屋の引き戸がノックされ、ゆっくりと開けられていったのだ。そして…飛び込んできた軽やかな声。
「失礼します」
てっきりお医者さんか看護師さんかと思ったら…違う。現れたのは、スーツ姿の女性だった。