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第39章 【罪と罰。2】

背が高く色白で…華奢なのに柔らかそうな、女性らしい体つき。自然な感じで巻かれた、栗色で艶々の髪。ぱっちりした目を縁取る、長くて量も豊かな睫毛。上品な色の口紅で彩られた唇。華のある雰囲気の…美人さんだった。 

「あらっ、有栖川社長!?」

わたしの知らない人。その人が、手に小さなフラワーアレンジメントを抱え、入口で鉢合わせた流星さまを見上げて驚きの声を上げた。役職で呼んでいるってことは、流星さまの会社の方…かな。

「…千衿?」

そう声をかけたのは麗さまだった。 …麗さまのお知り合い?

「──ああ。森下さん?」

麗さまの声で、流星さまも思い出した様子。ところが女の人は苦笑し、肩をすくめた。

「織笠です!織笠千衿(おりかさ ちえり)。森下は旧姓です!…このやり取り、もう三回目ですよー。いつもお世話になっております。ところで、先日の…」
「申し訳ない、急いでるので」

にこ、と愛想笑いを彼女に向けたあとわたしを一瞥し、流星さまは出かけていった。そして…

「お忙しいのね…あ、ごめんなさいね。お邪魔します」

千衿…さんが、病室に足を踏み入れた。

──────────

「麗くんごめんね?居てもたってもいられなくて。また血を吐いたって」

まっすぐベッドに向かった彼女は、さっきまで流星さまが座っていた椅子に腰かけ麗さまに顔を寄せて親しげに話し出した。…『また』?

「何しに来たの」
「何って。お見舞いよ」
「何で知ってんの」
「ふふ、ちょっとしたツテでね」
「…ふーん」

相変わらずだね、と言う麗さまの言葉に、彼女はクスクスと楽しそうに笑った。

そのやり取りを、わたしは少し離れた壁際に立ってぼんやりと眺めていた。ふたりが知り合いなのは確定みたい。それも、前々からの。
今のわたしの位置からは、彼女の背中しか見えないけど…なんだか…いい雰囲気。とても入り込めない。

「これ、ブリザーブドフラワーって言ってお手入れは…あらっ?」

立ち上がり振り向いた彼女は、そこで初めて、突っ立ていたわたしの存在に気付いた。

「こんにちは。えっと…」
「ぁ…はじめまして、未結です…」

一瞬の驚いた表情のあと、にこやかに挨拶してくれて。…それだけなのに引き込まれそうだった。…やだ、見惚れてしまった。同じ女なのに。


「妹さんね?麗くん」
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