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第39章 【罪と罰。2】

「…不謹慎じゃないですか?いくら何でも、入院先で営業なんて」
「そう?俺は仕事にはそのくらい貪欲な奴の方が好きだけど」
「……」

二人になった室内。膝上に乗せたパンフレットに目を落としながら、麗さまはそっけない口調で返してきた。

「…ああ、乗り換える価値ねえな」

独り言が聞こえてきた。自分の世界に入ってしまったようだ。普段なら邪魔はしないんだけど…疑問を確かめずにはいられなくて、再び声をかけた。

「…千衿さん、流星さまともお知り合いなんですね」
「顧客だからね。流星ってか、有建が。頑張ったからね、千衿」


答えの最後に誉め言葉。胸がザワザワするのを感じた。それに掻き立てられるまま、つい意地悪な口調になってしまう。

「でもそれは、麗さまの口添えがあって…流星さまだって、麗さまのお知り合いだからでしょう…っ?」
「未結ちゃん、それは違うよ」

麗さまがパンフレットから顔をこちらに向けた。…その表情は、わたしを諭す時のものだ。

「確かに頼まれて流星を紹介はしたけど、そこからは千衿、自分でアポとって営業して、自力で契約取ったんだよ。俺は何もしてないし、そもそもあのボンクラが俺の顔立てようなんて考えると思う?」
「……っ」

言葉に詰まったわたしの背後で、戸が開く音がした。
振り向くとそこには千衿さんの姿。申し訳なさそうな表情を浮かべている。

「ごめんなさい、私これでお暇するわ。急用が入っちゃって。またね、麗くん。お大事に」
「あ…、わたし、お見送りします!」

『お見送り』なんていう最高の口実を手に入れたわたしは、逃げるようにベッドを降りて彼女の後を追った。
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