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BeLoved.
第39章 【罪と罰。2】
「何あっさりマウンティングされてるの」
ぬくもりに絆され、ついさっきあったこと、感じたことをちびちびと正直に話し伝えた後。返ってきたのは…呆れ声だった。
「だって…」
「確かに、付き合ってたのは本当だよ?」
「……」
「"お前とはもう無理"て言ったのも本当」
彼の肯定がいちいち胸を突いて。
自分の表情が曇っていくのがわかった。
「でも理由があってね。それは聞いた?」
「…いいえ…」
「そういうところ上手なんだよね、千衿」
やっぱりね。と溜め息からの、流石だ、との呟き。麗さまは言葉を続けた。
「別れたのはね、浮気されたから」
「!?」
「俺が多忙で会えないうちに間男作られて、こっちが捨てられたって訳。しかも千衿、妊娠してたからね。そいつの子供」
浮気。あんなに綺麗で品の良い人が?疑う訳じゃないけど…俄には信じられず俯いた。
「"無理"って言うのも無理ないでしょ?」
その顔を彼が覗き込んでくる。…確かに、理由がそれなら納得はいくけど…何故だろう、胸の靄がまだ晴れない。
「でも…じゃあ…何で呼んだんですか…っ」
「呼んでないよ。勝手に来られたの」
彼は言う。スマホは壊れたから連絡手段はないし、保険の手続きなら退院してからで良い。自分も驚いたんだ、と。
「これは正式に抗議するよ。千衿はもちろん、チクった奴もね」
「……」
『あんたの知らない麗をあたしは知ってる』
思い出される彼女の瞳。今も尚胸の真ん中を容赦なく貫くんだ。彼女の言葉は確かに紛れもない事実。過去は変えられないし…そもそもわたしがどうこう言う権利なんかない。わかってる。わかってるのに…。
「──ほんとにかわいいね、未結は」
頭を撫でられた。その『かわいい』は褒めてるんじゃない。あやしと…冷笑が込められてる。
胸の靄が濃くなった。
「千衿さんの…何処が好きだったんですか?」
「ん?したたかで貪欲なところ。…ねえ」
俯き続ける顎に手が添えられ、上向かされる。
その先には…彼の瞳。
「俺が今一番好きなのは、未結だよ?」
「…」
「信じられない?」
「…!」
まっすぐ見つめたまま、彼の掌がわたしの口を塞いだ。…まるで『あの夜』みたいに。
違うのは、触れるだけの力だったのと──彼の瞳に…微かな『恐れ』の色が滲んでいたこと。
「──怖がらせたから?」