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BeLoved.
第39章 【罪と罰。2】

掌はすぐ離れた。けれど視線は重なったままだ。

『怖がらせたから?』──確かに怖い思いはした。だけどわたしは戻ってきた。『ここ』に。それはなぜ?わたしは彼が好きで、彼のそばに居たかったから。──首を横に振った。

「──じゃあ、どうして?」
「……」

わかってる。これはわたし自身の弱さのせい。…彼がかつて愛した『彼女』に勝るところが、わたしには何一つ無いからだ。

すごく、惨めな気分。言葉がでない。

「…どうすればいい?」
「……」
「どうすれば信じてくれるの?」

質問の仕方が変わった。そして、優しい口付けが額や米噛みに落とされていく。それは愛情と慈しみが込められた、心地良いもの。

これだけだって充分伝わる。彼の言葉に嘘がないこと。どんなにわたしを好きでいてくれるかということ。──でも、だけど…だめなの。

もっともっと安心したい。わたしの中のわたしはそう求めてる。彼の瞳に写るわたしは、そんな顔してる。普段の自分のことなんて高い高い棚に放り投げて、浅ましく。

ふ…っと、その視線が逸らされた。ひとつ息をついた彼が、瞳を伏せたから。

「…れ…、あっ…?」
「ちょっと待って」

ベッドのリクライニングが稼働する音がして。彼の上体が今までの座っていた体勢から少し倒れた。胸に抱かれていたわたしはそのまま彼を下敷きにし、乗っかるような格好になった。

「あ…重たいですよねっ」
「動かないで。針抜ける」

慌てて退こうとするも、腰に回された彼の腕がそれを許さない。しかも点滴がされている方の腕だ。言葉通りの事態が起きたら大変。大人しく従った。

伸びてきた反対側の手が頭を撫でた。ゆっくりと…やっぱり、あやすような手付きで。

「…ほんと、かわいい。未結」
「…かわいくないです…」
「かわいいよ」

かわいい、かわいい。彼は何度も繰り返してくれた。何度も頭を撫でて、髪にキスを落としてくれながら。

──彼女にもこんな風にしたの?…ああ、馬鹿。また要らないこと考えちゃう。

圧し殺すように胸元に顔を埋め、彼の着ている病院着をきゅっと握りしめた時だった。


「ねえ、未結」

頭を撫でる手の指が、髪に絡み付いた。そして彼は──麗は、耳元で囁いたんだ。

「俺がどれだけ未結を好きか、教えてあげる」
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