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第39章 【罪と罰。2】

もしかしたらそれはとても『怖い』言葉だったのかもしれない。だって彼は本当は『怖い人』だから。

そのうえ彼は『彼』以上に時と場所に構わない強引さを併せ持っている。押さえ付けられて──体に教え込まれるのかもしれない。『あの夜』みたいに。

でも何故かな。今は全く怖くない。単に、今の彼は体の自由が利かないから?声がとても平静なものだったから?…ううん、違う。なにかもっと別な…

「…ほら、わかる?」
「あ…」

抱き寄せられた胸元から聞こえたのは、少し早めな脈を刻む鼓動。

「未結が側に居ると大抵こう」
「……」

嘘みたい。だってそれは、彼と居る時のわたしと同じだったから。…静かな声と、頭を撫でる優しい手は続けてくれる。

「…未結のね、素直なところも頑固なところも、ちょっと間抜けなところも、全部可愛くて堪んない」
「……」
「やきもち妬きなところもね」
「っ、そんなのかわいくな…っ」

からかわれてる。一気に赤くなった顔を向けて抗議したら…返されたのは苦笑だった。

「違うよ。聞いて?」
「……」
「嬉しいの」

彼は言った。自分にそんな感情を向けてくれることが。と。

「それにさっき、泣いてもくれたね」

それも嬉しかった、と。再び抱き寄せられた手に、力が籠められて。…気のせいかな、鼓動が早さを増したような…

「未結のね、匂いも好き」
「…におい?」
「うん」

何にもつけてないんだけどな…ま、待って?バタバタしていたし、むしろ今は汗のにおいをさせているんじゃない…?!急に猛烈な恥ずかしさに襲われ、体を起こそうとした…けれど。

「だめ。離れないで」

…あっさり阻止されて。むしろさっきよりもより密着させられて。彼の鼓動も、薄い入院着越しに伝わってくる体温も、より鮮明になって…

「…ほら、わかる?未結」
「…?──!…え?!」

彼の左手がわたしの右手を取った。導かれた先は…彼の両足の間。触れたそこには…布越しでもはっきり判るほど、、存在を主張するもの。

「未結が側に居ると大抵こう」
「……」

さっきと同じ言葉。なのにさっきとは全然違う。意味合いも、中身も。

「凄いよね。それだけで勃つの」
「そんなの…」
「未結が欲しくて堪んないから」

今もね、と。平静だった声にはいつの間にか…興奮が混じっていた。
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