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BeLoved.
第41章 【密室の獣】

「…いいんですか?」

果てた後の心地いいまどろみを断たせたのは、流星さまの携帯だった。

床に横たわったままの頭上。シンク脇に置かれているらしいそれは、無視にもめげず、3度めの着信を健気に知らせている。

「ん?やべーよ」

こちらの心配を更に煽る台詞とは裏腹に、携帯の持ち主は至極のんびりとした反応。わたしを背後から抱きすくめたまま、起きる素振りを全く見せない。

「ホントは今日7時にゃ家出なきゃだもん」
「…え"?!も、もう、8時ですよ?!」

飛び起きたのはわたしだった。この位置からでも見える時計の差す時刻に顔面蒼白したから。

「あー未結、いーから」
「でも…っ!」

電話はきっとお仕事関係の方だ。…クレームの類いかもしれない!一人慌てふためくわたしとは真逆に、流星さまはゆっくりと上体を起こし胡座をかいた。

「大丈夫だって」

欠伸すら混じらせながら彼は言う。昨夜、急遽遠方他県の現場に視察に行くことにはなった。が、緊急ではないし同行者も秘書一名だけだから、と。

「……」

いくら秘書とはいえ人を待たせているのだから、そうはいかないだろうに。その後だって、次の予定があるだろうに。
普段の彼らしからぬ物言いに少なからず面喰らってしまった。お仕事に関してだけは真面目(言い方に語弊がある気がしないでもない?)なはずなのに…

「──っとに、ビックリだわな」
「!な、なにがでショウカ!?」

突然まっすぐ見据えられて。
心中読まれたかと身構えたら。

「人間てこーも変わるんだもんな。俺も麗も」
「……」

そこに居たのはいつも通りの…わたしがよく知っている、彼で。

「こんな、時間遅れるとか、床に寝転ぶとか、セックスしたくてたまんねーとかさ。俺考えたこともなかったわ。未結と居てからだよ」
「……」
「麗もそう。まー野郎丸くなったわ」

それだけ自分達は未結のことが好きで、夢中で、溺れてるんだよな。…苦笑しながら頭を撫でてくれるのは、嘘がつけない彼で。

「未結おまえ、ダメ人間製造機だ」
「なっ、なんですかそれ!」

そして、ときめきだけでは終わらせてくれない彼で。
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