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BeLoved.
第41章 【密室の獣】
そのドアを閉めた直後。わたしに与えられたものは──抱き締められてのキスだった。
「…ん…」
立ったままでキスを交わす時。26cmの身長差は、普段なら彼が屈んでくれることでわたしに負担はない。
でも今は違う。背伸びをさせて、ギリギリまで自分の方に上向けさせる、彼主体のもの。
下肢に力が入らない。崩れ落ちそうになるのを、後頭部と腰に回された彼の手が支えてくれる。
「んん…っ」
絡め取られる舌。必然的に唾液も喉の奥まで流れ込み、思うように呼吸できない。…少し苦しい。だけど離れることは許されない。…ううん。…わたしが離れたくない。
「ぁ……ん」
──酔い痴れていたから。強引さの中の優しさ。とろけそうな甘さ。苦しさの中の気持ちよさ。溺れたくて、もっとして欲しくて。彼の胸元を両手でキュッと握りしめた。
「未結、かわいい…」
ああ、ほら…その低い声にも頭の芯は溶かされて、身体の奥も熱くなっていくのがわかる。
…だけど。
「っ、あ…」
ぬくもりは離れた。
キスだけで恍惚とした表情を無様に晒し出すわたしを眼下に、彼は微かに目を細めた。満足そうに。
「中入ろうか」
「〰️〰…」
また『おあずけ』を喰らって。あんなキスをしておいて平静なままの彼とは真逆に、まんまと煽られた自分が無性に恥ずかしくて。
腹いせ(?)に、わざと歩行を邪魔する様に脇から抱きついてみたりしながら。
わたしたちは入ってきたドアの先にある、もうひとつのドアに向かった。
──さて、ここが何処かというと。
「未結、初めてだよね?」
「は、はぃ…っ」
所謂『ラブホテル』というところ。
存在は知ってる。…用途だって。足を踏み入れたのは…生まれて初めてだけど。
だけど驚いた。わたしの知識ではもっとこう…外観はお城みたいで絢爛豪華で…回転する丸いベッドやなんかがあって…って感じだったのに、全然違う(「古すぎ」と笑われた…)。
外観も駐車場も、ドアの先に広がる客室も、シンプルなのにお洒落で洗練されていて…まるでシティホテルのようだったから。
受付だって人を介さず、駐車場から直接部屋に入れてしまった(ちなみに今までいたのは駐車場と部屋を繋ぐ2mくらいの通路)。
「あ…」
『未結のことも食べさせてね』──その約束が果たされる時が来たのを知らしめる、ドアロックの音がした。