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BeLoved.
第41章 【密室の獣】
「シャワー浴びてくるね」
携帯、キーケース。ボトムのポケットから取り出されたそれらと、外した眼鏡を壁際のサイドボードに置いて。バスルームに続くだろうドアを開けながら麗さまはそう言った。
「あ…じ、じゃ…わたしも…っ」
片やわたしは。部屋に一歩踏み入ったきり突っ立ったまま、おのぼりさんよろしくキョロキョロと辺りを見渡していたんだけど。その声に慌てて駆け寄った。
──本当のことを言えば、身体は一度綺麗になっている。今朝、時間を大幅に遅れ出て行った『彼』に続いてシャワーを浴びたから。
…でもあれから時間も経ったし、これから…その、『そういうこと』をするのなら、やっぱり綺麗にしたい。どうせなら…一緒に。──でも。
「だめ。襲っちゃうから」
「……」
返されたのは身も蓋もない断り文句。そして手渡されたのは、これまたサイドボードに置かれた卓上充電器から外されたタブレット端末だった。
「テレビでも見て待ってて」
「……」
「お腹すいたら何でも頼んでいいから」
どうやらこれは壁に掛けられたテレビの操作も、飲食のオーダーもできるらしい。それ以上の反論はやめて彼を見送り、ベッドに腰掛け画面をタップしてみた。
「わ…映画も見れるんだ」
指をスライドさせてみれば、様々なジャンルと作品のタイトルが並ぶ。その中のひとつに目が留まった。
「…これ、面白そう」
チャンネルリストから選んだ知らないその作品は…たぶん恋愛もの。『初めてのお泊まり』。タイトルに惹かれ再生してみた。映し出されたのは──…
『……』
ひとりの女の子。年齢は…わたしと同じくらい?何処にでも居そうなふつうの子。部屋に置かれたベッドの上に横たわっていた。
『あ……っ』
「?!」
その上に覆い被さる…女の子より少し年上っぽい男の人。二人はそのまま…キスを交わした。最初は、啄むみたく。でもすぐに深くなって…
『は…ぁん…っ』
漏れ聞こえる吐息と、鼻にかかる甘い声と、絡み合う唾液の音。その様子がアップで写されて。彼女の紅潮した頬も、とろんと溶けた瞳も、余すことなく視覚に突き刺さった。
『綺麗だよ』
男の人は低く甘い声で囁きながら。女の子の服を脱がせていく。露になっていく真っ白な肌……って。
「これ…もしかして…」
さすがに『それ』の正体に気付いた時だった。
「AV見てたの?」