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BeLoved.
第43章 【彼の根底にあるもの。1】
「で、未結はちゃんと携帯を携帯して。心配するでしょ」
「はっ、はい!すみませんでした…」
はっ、と我に帰れば。静かな声でお叱りを受けていた。肩を縮めて頭を下げる。
一応携帯していたとはいえ、バッグの奥底で眠っていたそれを開いてみたら…麗さまからの着信の嵐だった。
「未結ー、ほら、肉」
「あっ…りがとうございます、流星さま」
「たくさん食えよー。俺口痛てーから全然食えーねけど。あ、飲みもん追加しよーな。ウーロンでいい?」
「……」
──もう、いつもの流星さまだ。
優しくて強引で。…でも、大切にしてくれて。
強さも弱さも全部含めて『自分』。逃げずに真正面から向き合い、受け入れて、貫いて。
そうだ。わたしは彼のそんな所を好きになったんだ。
…幸さんもそうだったのかな。
全てが自分中心で短気で気分屋で無神経で気まぐれで喜怒哀楽が激しすぎて振り回されて疲れることも多いけど…それも彼。
出会ったばかりの頃は、何を考えているのかわからなくて、冷たくて。ただただ怖くて仕方なかった。
「つーか、あばら痛てぇ。コレ折れてるかも」
「流星うるせぇ。自業自得だろ。黙って食え」
それは今も多少残っているけど…それでも今は、彼を可愛いとすら思えるときがある。
変なの。人ってこんなに変われるんだ。
わたしも…流星さまも。自然と笑みが零れた。
「こちとらテメーのおかげでしばらく固いもん食えねぇんだよ。訴えられないだけ有難いと思え、犯罪者」
「へーへー。麗くんごめんねー」
この、相変わらずのやり取りにも。(余談だけど麗さま今は仮歯らしい…)
…あれ?そういえば。
噛んでも噛んでも肉汁が止まらないお肉を味わい飲み込んだあと、ふと過った疑問を尋ねた。
「麗さま、どうしてわかったんですか?わたしたちが車庫にいるって…」
「──あ、すみませんライスお代わりお願いします。特盛りで。…ん?あのふざけた電話の後、椎名兄に電話したの」
「…椎名さまに?」
「うん。で、車庫見てもらったんだよ。このボンクラあの家に居場所ないから、居るんなら車かと思って。そしたら当たり。『車揺れてる』って、椎名兄笑ってたよ」
……。ということは、椎名さまにも見られていたんだ…。
あまりの気まずさに言葉を失ったわたしは、今すぐこの場に大きな穴が空いてくれないかと願ったのだった。