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BeLoved.
第43章 【彼の根底にあるもの。1】
「あ、あと…!シャッター、あんな…叩いたりして大丈夫なんですかっ?…通報されたり…その、ご実家お向かいでしたよね?ご近所の目も…」
「叩いてないよ。蹴ったの。大丈夫だよ。椎名兄に許可得たし、いくらでも弁償するし。それにあの辺じゃもう評判なんか下がりようないから。全然平気」
…なんですかそれ…
「それ以前にあの家、もうずっと空き家だし」
「え?でも流星さまが、"お母さまがいる"って…」
「うちの母親、故人だよ」
「うーわっ、タレめっちゃ滲みる」
…背筋に冷たいものが走りかけたのを、流星さまの空気の読めなさが救ってくれた。
「ていうか流星、お前なんで今回未結連れてったの」
「一人じゃ無理だったから」
安定の即答。…そもそも流星さまがご実家に行ったのは、お父さまが発熱し…『危ない』かもしれない、と椎名さまから言われた為だ(実際は幸いそこまで大事では無かったけども)。
…彼なりに覚悟していたのかもしれない。その僅かな隙間にあった不安な気持ちを補うためにわたしを選んでくれたのかな。…少し、嬉しくなった。
「じゃ、未結も会ったんだね。流一朗さんに」
「は…はい!本当にあの、流星さまたちにそっくりで…」
「あ、俺あのおっさん嫌いだからどうでもいいよ」
「ぶっはっ!」
飲みかけた烏龍茶を盛大に吹き出してしまった。気管にも入り込んでしまい噎せて咳き込んでしまう。
「なーにやってんだよ、大丈夫か?未結」
背中を摩ってくれたのは流星さま。自分の父親を嫌いだとバッサリ言われたというのに全く平常通りだ…
「な、なん、なんれ、れふかっ?!」
「昔、"お前しゃぶるの好きそうなツラしてんな"て言われた挙句に"目付きが気に入らない"て殴られたから」
「あったあった!懐かしー!」
意味わからないでしょ?と。思い出している麗さまの表情は険しい。片や流星さまは…楽しそうにケタケタと笑っている。それにしてもお父様…。
「あ、そーだ。なー未結」
「、はいっ」
わたしの呼吸が落ち着いた頃、ふいに流星さまから呼びかけられた。彼はボトムのポケットを探り、何かを取り出すとテーブルの上にそっと置いた。それは──
「これ、おまえにやるわ」
「…!これ…」
彼と幸さんの、あの写真だった。