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BeLoved.
第44章 【彼の根底にあるもの。2】
「うちの母親…まあ前も話した通り、ブッ飛んだ人だったんだけど。元々女の子が欲しかったの。名前も"麗"で"うらら"に決めてたんだって。で生まれたのが俺」
「……」
「諦めきれなかったんだね、そのまま"うららにする"って言い張ったんだって」
ここで流星さまが吹き出した。わ、笑うところ?確かに男の子に『うらら』…わたしも…ちょっと…とは思うけれど。
「そしたら唯くん…兄貴がね 『せめて[れい]にしたらどうか』って提案したの。『眉目秀麗、胸襟秀麗な人間になれるように』とか何とか後付けして。それで母親も納得したわけ」
あれ…気のせいかな。
麗さまの表情が少し険しくなってる…?
「そんな感じ。適当でしょ?だから誕生日自体どうでもいいの」
興味無い。言い捨てた時の彼は普段の表情だったけど。
…触れて欲しくない話だったんだ。
「何が面白いって、俺がこの話知ってるってことだよな。誰から聞いたか忘れたけど、普通言わねぇよな」
「お前ん家みんなイカれてるもんな。マトモなの唯くんだけじゃね?俺椎名からこの話聞いた時、笑ったし」
わたしの心境とは裏腹に、楽しそうな、でもちょっと意地悪い笑顔の流星さま。…もしかして、麗さまを傷つけるためにわざと話させた…の?
「流星それ姉ちゃんに言っとくわ」
「、マジ?」
あっさり返り討ちを喰らった流星さまを見て、そんな疑いは一瞬で消え去った。
この人はそんな回りくどいことしない…というか、できない人だった。これでもかってくらいわかりやすいものね。
「お前ほんっっとちっせーな、麗」
「おい悪口って自己紹介らしいぞ」
麗さまだって、本当に嫌なことならわざわざ話したりなんて絶対しないはずだ。
「…ふう」
不思議と心が軽くなっていた。以前なら慌てふためくしか無かった言い合いも、今ではじゃれあいにすら見えて。こうしてお茶を飲みながら眺める余裕さえある。
──考えてみれば、この暮らしを始めてもう丸一年。
わたしも成長したんだな。…いや、麻痺してきたというべきか。