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BeLoved.
第44章 【彼の根底にあるもの。2】
「もうおしまいにして下さいねっ」
とはいえ、時間は過ぎていく。流星さまに至ってはそろそろ出勤時間だ。ぽんぽんっ、と手を鳴らしながら呼び掛けた。
彼らはそれに応じて立ち上がり、それぞれの身支度を整え始めたのだった。
──────────
「じゃーな、未結」
「、いってらっしゃいませ…」
玄関。額にキスをして頭を撫でてくれた後、流星さまは出て行った。
「…。あ…麗さまお帰りは何時頃ですかっ?お祝いしましょうね、絶対!」
「…未結ちゃん、俺の話聞いてた?」
続けて廊下に姿を表した麗さまに駆け寄った。半ば…いや、完全に呆れられたけど、何歳になっても、どんなに興味ないって言われても、一年に一度の日。やっぱりお祝いしたい。大事な人だもん。
「そもそも今日、帰れないし」
「あ…」
…そうだった。
麗さま、今日は泊まりだったんだ。前から伺っていたのにすっかり忘れてた。…ああ、わたしの馬鹿。
「ごめんね、俺もう行くよ」
「…。はい…ごめんなさい、足止めして…」
うなだれつつ壁際に避け道を空けた。彼はわたしの前を通り過ぎようとした瞬間、なぜか足を止めた。
「そんなに祝いたい?」
「っ、え?」
ふいに視界が暗くなった。壁を背にするわたしの正面にいつの間にか彼が立ち塞がったからだ。
見下ろされる。…一緒に過ごすようになって一年経っても、ほぼ毎日目にしていても、このきれいな顔はやはり緊張してしまう。
まして今、彼はわたしの顔の真横の壁に右手をついて、自分と壁の間にわたしを閉じ込めてる。…否が応でも鼓動は早まった。
「ねえ」
「も…、もちろん!」
見下ろす瞳を見上げて何度も頷いた。だって一年に一度の特別な日。どうしてもお祝いしたい。一緒に。
「じゃあ、何してくれるの?未結」
「なにって……あっ、食べたいもの、何でも作りますっ!」
きっとそれが一番喜んでくれるはず。
そう思って言ってみたのに彼には全く変化がない。それどころか「それだけ?」と小首を傾げられてしまった。
「…えっと…」
どうしよう。プレゼント…は全く思い浮かばない。流星さまの時はすぐに決まったのに。そもそも彼らは欲しいものがあれば自分で買ってしまうし……あ、そうだ!
閃き口にしたそれは妙案か……墓穴だったか。
「わたし、なんでもします!」