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BeLoved.
第44章 【彼の根底にあるもの。2】
──しばしの沈黙が流れた。
彼は目を見開いたままわたしを見下ろしている。…ど、どうかな。お祝いしたいって気持ち、少しは伝ったのかな。ここで視線を逸らしてしまったら負け(?)な気がして、じっと見つめ返した。
「…はは」
先に動いたのは、彼。視線を床に落とし一笑すると、一歩後退しわたしとの間に距離を作った。
「あのね、俺、未結のそういうところ、大好き」
「…っ?」
「でもね、すごく心配。…ちょっと待っててね」
はてなマークを浮かべるわたしに断りを入れ、彼はボトムの後ろポケットからスマホを取り出すと何処かへ電話を掛け始めた。
聞き耳を立てていたわけではないけど、こんな至近距離ではいやでも聞こえてしまう「遅れます」「埋め合わせは──」等々の言葉。どうやら遅刻の連絡を入れているようだけど…どうして?
「お待たせ、未結」
やがて用が済んだそれは元の位置に収められ、彼は再びわたしの正面に立ち塞がった。
「あ…あの…お仕事は…」
「午後まで行かない」
「い、いいんですか…?」
「だって未結がお祝いしてくれるんだもん」
「……」
「"なんでもする"んだよね、未結ちゃん」
今、答えが出た。…墓穴だった。