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第45章 【彼女の根底にあるもの。】

はやく帰ってきて。

深部で色濃さを増し、戦慄き続ける『疼き』。
触れられたい、愛されたいって、叫んでる。

自分の指を挿し入れ、生理的に滲んだ液で奥へ滑らせたって届かない。むしろ、渇求は強さと貪欲さを増していくだけだ…

｢……っ｣

そんなつもりはなくても、指にそんな動きをさせたら。慣らされた身体は快感を見つけてしまう。
肌にも、唇の隙間から盛れる吐息にもか細い声にも、微熱が宿り始めた。

…身体が反芻し始めてる。愛された時のこと。

ほら。彼は…彼らは、いつもどう触れる？

骨張って、華奢じゃないのにしなやかな長い指と、温かく乾いた掌。大好きな彼らの手は、どう触れる？
流星の手は？麗の手は？──どう愛してくれる？

｢、あ……ッ｣

くちゅん、と一際卑猥な水音がした。…『濡れた』んだ。生理的なものじゃなく、わたしが自ら、溢れさせた蜜。…『疼き』に近付けた証拠。

…もっと、ほしい。反芻は止まらない。

仰向けだったはずの体は、いつの間にか起き上がって…流星が好きな、四つん這いの体勢になっていた。

わたしを…抱くとき。流星はわたしを自分のものだと満足するまで、絶対に離さない。

そして自分の全てをまっすぐぶつけてくる。いつも。
ほら、こんな風に。激しいのに、優しくて…

『未結』
｢ふあ…っ…｣

背中に覆い被さられ耳元で名を呼ばれれば、全身が性感帯になったみたく敏感になる。…こんな時でも。

『未結ちゃん』
｢ん…っ｣

彼だけに溺れることは彼が許さない。…こんな時でも。

彼は…麗はいつだって甘やかしてくれて、とろけさせてくれて、わたしを貪り尽くすまで、絶対に離さない。
優しいのに、激しくて… ほら、それが一番伝わるのは…

｢あ……｣

キスをした時。──だけど今わたしは『ひとり』。どう頑張っても叶わない。例えもう片手の指に、むしゃぶりついたって。

疼きに近付いた指だってそう。いくら反芻したところで所詮はまやかし。届きはしない。


｢やだ……いやぁ…っ｣

寝具に顔を埋めむせび泣いた。…余計、恋しくなって。


はやく帰ってきて。


『ひとり』じゃ、駄目なの。
『貴方たち』じゃないと、駄目なの。


触れられたい。愛されたい。…安心したい。


だから、ねえ、おねがい


｢、……ぃ……っ｣


はやく帰ってきて──