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BeLoved.
第10章 【Master Bedroom. 2】
「見せて」
連れてこられたのは麗さまの部屋。ベッド縁に座らされたわたしの足元に膝をついて屈んだ彼は、目線を下に落とし短い言葉で命じた。…けど、萎縮しきっているわたしは、その伏した目を縁取る長い睫毛を見つめることしかできない。
「…いい。自分で見るね」
微動だにしないわたしに苛立ちを隠せぬまま、彼はわたしの傷ついた右足を両手で包むようにして取った。
態度と口調はとても怖かったけど、その手はとても優しいもの。少しだけ安堵を覚えた。
「…切ったの、ここだけ?」
「は…っ、はい、…たぶん…」
傷を見つけた後の、吐き捨てるような口調。…彼の怒りはまだ引いていない。
当たり前だ。言いつけを守らなかったあげく、グラスまで割ってしまったんだ。微かな安堵など何処へやら。俯くしかなかった。
「よりによってガラス…」
「……?」
「見た目より深く切れるの」
その傷口に顔を寄せた彼は、あろう事かそのままそこにそっと口付けた。
「?!ゃ…っ、麗さま?!」
突然のことに驚き足を引き離そうとしても、しっかりと捕らえられているため叶わない。
すぐに舌も絡められ、親指全体が彼の咥内に収められてしまった。
「れ……」
傷口を舌の表面が包む。滲みたりは…しない。くすぐったさで思わず身をよじった。舌はそのまま、血が残した赤い痕を払拭するように、親指と人差し指のあいだまで這っていく。
「…ん…、ゃ…っ」
指先は神経の集まり。足だってそう。だから少しの傷でも強く痛むし…まして今、この瞬間みたく舌の持つ熱と柔らかさとで、愛撫されるように触れられたら。
「ぁ……」
伝わってくるものが、くすぐったさだけではなくなってきている。──もっと別のものが、確実に忍び寄ってきているのがわかった。