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BeLoved.
第15章 【30cmの壁】

「…なるほどね。そういうこと。…で、お前は何をしたかったんだ、流星」

麗さまはこちらに背を向けて丸まったままの流星さまを覗き込み、そう尋ねた。

流星さまも時間が経過したからか、口が聞けるまでは持ち直したようだ。ぽつぽつと何事か呟いている。
麗さまさそれにうん、うん、と相槌を打ったあと、再びわたしに体を向けた。


「…そのまま言うね。『口半開きで画面ガン見してる未結がすっげー可愛くて、後ろから抱きつこーとしたら急に立ち上がられてヘッドバットモロ喰らいした。超痛てぇ』だって」
「……。そ…そうだったんですか…」
「ボンクラの自業自得だから気にしないでね」

くだらねぇ…、と、麗さまはため息をついた。
しかし理由はどうあれ、これは彼にも起こりうる事態だ。

身長156㎝のわたしは、流星さまとは30㎝、麗さまとは26㎝の差がある。
お互い座った状態で後ろから抱き締められると、わたしの頭の上には彼らの顎が乗る。

今回は本当にタイミングよく(悪く?)かち合ってしまった。…もし舌を噛んでいたらと思うとゾッとする。気を付けないと。


「それより未結は大丈夫かって」

このバカより自分もそっちが気になる、と麗さまは言い、この辺?と頭頂部辺りに手を置かれた。…すっかり忘れていた。指摘されて初めて感覚が戻ってきた気がする。

「少し…じんじんしますけど、全然平気です」
「…そう?よかった。おい流星聞こえたな?」

麗さまもようやく普段通り。
彼がさっき荒れたのは、わたしを心配してのこと。
流星さまだって自分の方が辛いだろうに、わたしを気遣ってくれて。
彼らの優しさがありがたかった。怖いけど…。


「…じゃ、俺また寝るよ…おやすみ、未結」
「…っ。…ありがとう…ございました」

小さく欠伸を漏らしたあと。唇にキスを残して、麗さまは出ていった。…流星さまがまだ背を向けていてよかった。
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