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LaundryHeavenly.
第13章 Heavenly.13

「お前は不思議だね、レノ」

蝋燭の仄かな明かりが室内を
…そして、私と彼を照らす。

闇に包まれる前に彼が灯してくれたのだ。
燭台をベッド脇のテーブルに置いた彼は
再び椅子に腰掛けながらぽつりと呟いた。

「え…?」
「格好がつけられなくなる」

苦笑混じりに頭を撫でられたけれど
またしても私は混乱してしまった。
怒らせたのではないみたいだけど…

「…ハイジまでな」
「?」
「あれも、話したんだろう」

自分のことを、と彼は言う。

私の知らないハイジさんを知る彼にとって
私と接しているときのハイジさんの様子は
驚きそのものだったそうだ。

相手の真実を暴き出すことに心血を注ぎ
自らの真実は一切見せず、気取らせない

それが謀略兵でありそれがハイジだった。

ハイジはずっとそれを忠実に守ってきた。
仲間にも胸の内を明かすことはなかった。

10年からの付き合いである自分も例外ない
兵士になる前からの付き合いでも、自分は
ハイジから完全には信頼を得ていないのだ

「弟がいたことも知らなかった」

浮かべた笑みに陰る微かな淋しさ。
私には掛ける言葉が見つからない。

彼はハイジさんの過去を知らないのだ。

ハイジさんのことだ。
上手に上手に逸らかしてきたのだろう。
思い出したくも触れたくもない事実を。

自分が辛いのはもちろんのこと
仲間も傷つけたくなかったのだ。

何故なら仲間の父親たちは彼の上客だった。
それを知った仲間はどんな気持ちになるか。
己を語らぬのは彼の優しさでもあったのだ。

しかし代わりに淋しさを与えてしまった。
ここまできても信用されていないのだと。

…やるせなかった。
もちろん私に真実を伝える権限などない。
…もどかしかった。

「ナノも」

目をやった先。彼の右手は彼の腿にあった。
それを見た私はハイジさんの言葉を思い出す。

『どうしようもなくなった時自らを傷つけ』

「…結局救ってくれたのはお前だ、レノ」

『やり場のない気持ちを鎮め落ち着かせる』

立てられた爪が布越しに肉へ喰い込んでいく。
それは最早『その行為』が常習的で、尚且つ
無意識に行われてしまっている証でもあった。

「…だめ!」

自分がした事に気付いた時。息が止まった。
私は彼を傷付ける彼の手を叩き払っていた。
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