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LaundryHeavenly.
第2章 Heavenly.2
群青色の髪。長めの前髪が邪魔をして
いるけれど、色白で細面で…
整った顔立ちの人だというのがわかった。
暗色の鋭い瞳はまっすぐ私を見下ろしている。
「診察する」
そう言った彼は床に膝をついて屈み、
私の方に手を伸ばしてきた。
反射的に目を閉じてしまった直後、
額に乾いた温もりが広がった。
彼の掌全体が当てられていたのだ。
それはまるで、検温するかのようで…
間もなく離れたその手は、ピリ、ピリ…と
音をたてながら、私の頭から
何かをゆっくりと剥がし始めた。
髪が引っ張られる感触もする。
けれど痛みは全くない。
…まるで私を気遣ってくれているような
優しく、丁寧な手つきだった。
「…大丈夫そうだな」
彼が手を動かす度に、ツン…とした
独特のにおいが鼻をつく。
このにおいは知っている。消毒薬だ。
お嬢様が怪我をされたとき
よく治療に使ったものと同じだ。
お嬢様はおてんばだったから
木登りもかけっこも大好きで…
私はハラハラしながら後を追って…
…楽しかった。幸せだった。
でもあの日々はもう返らない。
今、目の前に兵士さんがいる。
私に触れている。それこそが
全ては現実なのだと知らしめている。
目を閉じた先に広がる暗闇。
浮かぶのはあどけない笑顔。
お嬢様はもういない。
触れることは永遠にできない。
ああ、どうして私じゃなかったのか。
ああ、どうして私は生きているのか。
溢れ出した涙が目尻をつたい
流れ落ちていった。