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LaundryHeavenly.
第2章 Heavenly.2

「…すまない。痛んだか」

ハッ…と目を見開く。
滲んだ視界の先には、兵士さん。
でもすぐ布で目元を覆われたため
その表情を伺うことはできない。
彼は涙を拭ってくれたのだ。


そういえば私、頭を怪我していたんだ。
そんなこと忘れるくらい、
痛みはきれいに消えていた。

さっき剥がされたのは絆創膏…?
この人は傷を診てくれていたのだろうか。

先刻の消毒薬のにおいといい、
「診察する」という言葉と行動といい。
兵士の出で立ちをしてはいるけれど
この人は…お医者さま…?

すぐ眼前で、彼の人差し指が左右に動く。
私の目は反射的にそれを追った。

「目は、見えてるな。話せるか」
「……っ、…っ、…あ"っ…」

金魚のように口をパクパクさせ、
喉に力を入れていく。
ようやく絞り出せたのは、
老婆のようながらがら声。

でも、気がついてから時間が経つにつれて
全身に力が巡り戻っていくのがわかる。
ゆっくりとだけど手足も動かせる。
私の体は生き返ろうとしていた。


「お前は丸二日寝ていたんだ」


二日。
あの夜からそんなに時間が経っていたのか。
どうりで体は重く、喉にも力が入らないわけだ…

「悪いが全身診させてもらった。頭以外に目立った傷はなかったが…どこか痛むか」
「ぃ…ぃえ"っ…」

私の答えに、彼は「そうか」と
安堵したように息をついた。

意識がない間に裸を見られていた。
そんなこと今はどうでもいい。

確かめなくては…
父と母は。旦那様と奥様は。…お嬢様は。

「無理に起きなくていい。今はゆっくり休め」

彼は立ち上がった。離れるつもりだ。
…待って。私、あなたに聞きたいことがある。

「あ、…あ…の…っ」
「───今戻った」
「ナノー、たっだいまー」

一瞬、テントの中に陽の光が差し込んだ。
そして私の声に被せ…いや、
掻き消すような大きさで
二つの声と足音が、死角からした。
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