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LaundryHeavenly.
第14章 Heavenly.14
「──すっげぇ…キツ…」
男はその衝動のままに
何度私を切り裂いたか
男は何度私を貫き、最奥に
欲の果てを吐き出したのか
ひとつとして覚えていない。
「あ……」
男の欲と私の血が混じった
独特の香りが鼻をつく。
それは私に、私が初めて『男』を知った
あの夜のことを思い起こさせた。
『大人しくしろ』
『大声を出すな』
『全て飲み込め』
もちろんその命令すべてに従った。
従い尽くすしか知らなかったから。
流れ出る血を潤滑油にして
切り裂かれた私の身体と心
痛みと言葉にできない想い
私はあの夜あの時はじめて
『従い尽くす』という事の
本当の意味を知ったのだ。
『従い尽くす』それは心を殺すこと。
心を殺せばなにも感じない。
心を殺せば闇に堕ちられる。
心を殺せばそう、何もない…
そう
こんなことは何でもないのだ。
だから、大丈夫──
「お前、どれだけ咥え込む気だよ」
上体を屈めた男が首筋に舌を這わせる。
驚きと卑下の混じった呟きが耳に入る。
気色悪さしかなかったはずのそれも
ああ、ほら。もうなにも感じない。
「…レノってったな」
「…っ…」
「娼婦なりたてか?」
グン、と男は子宮の入り口を突く。
問い質す様に。呻きながら頷いた。
「へぇ。王族とヤれるなんて幸運だな」
「!」
その言葉は闇に堕ちかけた私を
直前で引き留め瞳に光を射した。
王族。今確かにそう言った。
ああ、やっぱり、この男は…
「れ…」
「あ?」
「あなた…… だれ……」
ひどく愚かで馬鹿馬鹿しい問いだったと思う。
案の定男は一笑に付し蔑みの眼差しを向けた。
「俺か」
しかしその哀れさが逆に気に召したか。
男は──自分が何者なのかを明かした。
冥土の土産に、と。
「アンクリーネス第3王子、マキアート」