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LaundryHeavenly.
第14章 Heavenly.14
ねえ、おにいちゃん。
どこからきたの?
どうしてひとりなの?
おともだち、いないの?
さみしいね。かわいそう。
サラサにはね、たくさんいるよ!
パパも、ママも、おともだちも!
そうだ!ねえ、おにいちゃん!
サラサがおともだちになるね!
─────
「──笑えるだろ?」
懸命に舌を這わせる私の頭上で。
王子は嘲笑しながら言い捨てた。
「そう言ったんだぜ。この俺様に」
私が全てを失った日の、昼刻。
王子はこの地に足を踏み入れた。
煩わしい護衛の目を盗み一人で。
何の意味ない。気まぐれだった。
ここは王都から離れた片田舎。
広がる景色は長閑そのもので
王都の状況など嘘の様だった。
草の上に寝転んでみる。
視線の先は真っ青な空。
突然そこに少女が現れた。
──サラサお嬢様だった。
『こんにちは!』
お嬢様は人見知りをなさらなかった。
人懐っこく誰ともすぐ仲良くなれた。
しかしそれは警戒心が希薄という事。
ましてやこの時は、相手が悪すぎた。
その素直さと無邪気さが
命取りになってしまったのだ。
「変なガキだった。そこで殺ってもよかったけど」
頭を掴む手の動きが速さを増した。
絶えず突かれる衝撃と王子の言葉で
失いそうな意識を必死で繋ぎ止めた。
「折角"おともだち"になったんだからな」
─新兵器の最初の犠牲者にしてやった─
その言葉の直後。『それ』は一際脈打ち
咥内に欲を放った。焼けそうに熱い欲を。
「飲み込め。溢すな…、オイ!」
命令を守れず唇の端から一筋を滴らせた。
直後バチン!と強烈な平手が頬を打った。
だが今の私には何の意味もない。
今の私は痛みもなにも感じない。
お嬢様が王子と邂逅したとき
私は何をしていた?……ああ
洗濯物を干していたんだった?
夕食の下ごしらえをしていた?
刺繍?繕い物?お庭の手入れ?
どうしてそばにいなかったの?
わからない。わからない。
わかるのはたったひとつ。
お嬢様はもういない。
奪ったのは王子
殺したのは王子
『気に入らなかった』
それだけの理由で
この男は人を殺せる
何の罪もない子供でさえも。
「ぼーっとしてんなよ、レノ」
終わりじゃない。放られたベッドの上。
王子は冷たい目で私を見下ろし命じた。
「そこに手ぇついて四つん這いになれ」