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LaundryHeavenly.
第14章 Heavenly.14
王子の死角で、力無く横たわらせた私の両腕
その右手には───置いていくつもりだった
ブライトさんから託された刃が握られていた
四つん這いにさせられたとき
後ろを犯され俯せにされたとき
枕の下に隠した刃に、手が触れた。
それから握りしめ隠し持っていた。
折り畳み式で、小さくて軽い刃。
小さくても、軽くても、刃は刃。
片手で容易に開けた刃。
握り締めた手には震えも迷いもない。
『レノ』
『レノちゃん』
『娼婦さん』
私に優しくしてくれた彼らが過る
私を見つけ介抱し生きる道をくれて
守り慈しみ敬意を表してくれた彼ら
『レノ!だーいすきだよ!』
最後に過ったのはサラサお嬢様の顔。
天使のような笑顔。私のたからもの。
『せっかく"おともだち"になったんだからな』
それを奪ったのは────この男だ
王子の死角で、ゆっくりと持ち上げた右手。
目線の先は着崩された軍服から覗く首筋。
王子の死角。首の後ろ。
今しかない。一度しかない。
頭の中は冷たくハッキリとして
恐ろしいくらいに冷静だった。
今しかない。一度しかない。
私はそこをめがけ、刃を突き刺した。