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LaundryHeavenly.
第15章 Heavenly.15
ハイジさんから専属娼婦のお誘いを頂いたとき
願ってもない好機だと思いました。
奴隷である私が敵国の、ましてや王子に
近付くことなどまず不可能です。
でも戦地で生きる兵士である彼らといれば
接触できる可能性はぐっと高くなる筈だと。
あわよくば敵国兵が、私を慰みものとしてでも
利用してくれるかもしれない。王子の近くに迄
連れて立てて行ってくれるかもしれない。
いずれにせよ私が独りでいるより絶対にいい。
『王子を殺す』この思いを果たすためには。
だから私は娼婦になりました。
…報恩のためより、私自身のためにです。
国がために人を殺す宿命と己が殺される恐怖
常に隣り合わせに生きる、兵士さんたち。
今はよくても、いずれ彼らは
私に厳しく辛く接してくるだろう。
そう思っていました。覚悟していました。
でも、あなた達は変わらずやさしかった。
それどころか私に敬意を表し
感謝すらして下さった。
勿体ない言葉も沢山頂きました。
…嬉しかった。とても。
…でも、戸惑いました。
優しさを受ければ受けるほど
胸は痛くなる一方でした。
そこにきての部隊解散のお話。
…迷いました。葛藤しました。
隠れ蓑だった娼婦ではいられなくなる
『王子を殺す』成就させる道が遠退く
どうすればいい。どうすればいいのか。
けれどブライトさんがくれた言葉は
私に決断させました。
私のような汚く弱い人間が
これ以上一緒にいてはいけないと。
これ以上私の黒い思いのために
あなた達の優しさにつけ入り
利用するのはやめようと。
いつの間にかあなた達は私の中で
サラサと同等に大切で
かけがえない存在になっていたのです。
そう思っていながら。
有り余る恩義を受けておきながら。
報恩のためとみせかけて私は
自分のためだけに生きていました。
…本当にごめんなさい。でも
これが私の本当の姿なのです。