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LaundryHeavenly.
第15章 Heavenly.15
私の全身に冷たいものが走る。
王子は絶命していなかったのだ。
「…なにか呟いています」
「…蘇生術か!ハイジ!」
それからの彼らの動きは瞬きの速さ。
連携は流れる様だった。
ハイジさんは王子の背中に踏み乗り
投げ出されていた彼の両腕を掴むと
背中で無理やり交差させて拘束した。
ブライトさんは身を封じられた王子の
頭に片膝を乗せて床に押さえ付けると
丸めたシーツを咥内に強引に押し込んだ。
ナノさんは私の前に立ち憚った。
私の視界から王子を遮るように。
「あの噂、本当だったんだね」
アンクリーネス王家は呪術も嗜む。
ギリ…と王子の腕を締め付けながら
ハイジさんは呟いた。悪趣味だと。
「……」
首は何処を刺されても致命傷になる。
死期を悟っただろう王子の今際の際
あの呟きは蘇生のための呪文だった…
「──だから、再来していたんだな」
私に背を向けたまま
今度はブライトさんが呟いた。
王子は一度襲来した地に再来する。
それはその地に色濃く残された
命を奪われた者たちの無念や恨み
辛み、憎しみ、未練。それら全てが
己の力になりうるからだ、と。
そして…愛するものを失い
悲しみに暮れる者達からも同様に
力を得ていたのだろう、と。
「最高に美味しかったんじゃない?レノちゃんなんて」
「…ハイジ!言葉を選べ!」
「……!」
──なんなんだよ、お前は──
王子の言葉が甦る。この言葉を発したあと
確かに王子の雰囲気は変化していた。
私の「思い」は王子の『力』になっていた。
私は言葉を発することができず
ただただ恐ろしさに震えたのだった…