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LaundryHeavenly.
第15章 Heavenly.15
王子の首の傷は塞がりかけている。
王子の身体は生きようとしている。
私の思いは果たされなかったのだ。
それを痛感させられた今。
私に残されたのものは絶望のみだ……
「─呪術はね、レノ」
脱け殻になりかけた私に入り込む
低く甘い声はブライトさんのもの。
「口に出し言葉にして、初めて完成するんだ」
「……」
ブライトさんの言わんとすること。
王子は呪文を唱えている途中で拘束された
すなわち、彼の呪術は完成していない。
絶命こそしていないが
再生したわけでもない
呪文を唱えたくとも王子の口元は
布を詰め込まれ封じられている
『呪術』を『言葉』にできない
『呪術』を果たす事ができない
それは、つまり──
「次は確実に死ぬよ」
私の表情から心中を読んだらしい
ハイジさんは肯定した。
確実に殺せる。思いを遂げられる。
まだ一縷の望みは残されていた。
「娘ちゃんの敵、討ちたいんだよね」
「!…それ…」
サラサは私が産んだ私の娘。
さっき言い当てられてから疑問だった。
もちろん私は話してなんかいない。
…答えてくれたのはナノさんだった。
「妊娠線がありました。…薄くですけど」
最初の夜。負傷した私を診てくれたとき。
彼は私の腹に残された痕を見付けていた。
「それに、目閉じた顔そっくりだったし」
続くハイジさんの言葉。
だから姉妹だと思った。でも否定された。
聞けば自分は奴隷だという。もしや、と。
「孕まさせられた子かなって」
「ハイジ」
僕らも半信半疑だったけどね、と
苦笑した彼をブライトさんは嗜めた。
「──いずれにせよ、レノ。我々は立場上、"私怨"による殺人を見過ごす訳にはいかない」
「……」
──ああ、やはりここまでだ。
容易に想像のつく未来。
王子はこのまま彼らに王都へと連行される。
そうなったらもう永遠に私の手は届かない。
万事休す──そう思った矢先だった。
「──但しそれは"見ていれば"の話だ」