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LaundryHeavenly.
第15章 Heavenly.15

「…!」
「"見ていない"ものには対処できない」

───わかるな、と彼の瞳は語る。

ブライトさんの言わんとすること。
学もなく鈍い私でも察しがついた。

見て見ぬふりをしてくれる

私に思いを遂げさせてくれる

…そういうことだ。

「でも、サラサちゃんは悲しむからね」
「!」

射し込まれたのはハイジさんの声。

彼の口調は普段と変わらない。
でもそれは今の私にはまるで
氷のように冷たく突き刺さった。

「お母さんの手が血に染まるんだから」
「……」

返す言葉がなかった。僅かな沈黙のあと
再びブライトさんが口を開く。

「…我々にとっての最善策はな、レノ。このまま王子の身柄を本部に引き渡すことだ。──元々敵国は争いを好まない。今度の乗っ取りもこの第3王子の独断で行われ、父王は手を焼き半ば放逐している状態と聞いている」
「…第1王子第2王子は人格者だそうですから、劣等感故の蛮行だったのかも知れませんね」
「……」

ナノさんの冷静な声。
端正な顔は表情こそ変わらなかったけど
彼にも何か思うところがあるようだった。

「生かすか殺すか処遇を決めるのは上層部だ。けれども諸悪の根元の自由を絶てば自ずと戦は終結に向かう。…すぐには無理かもしれないがな。…こんな建前よりも、レノ。我々はお前に汚れて欲しくない」
「……」
「それでもどうしても王子の命を絶ちたいなら──我々が、やる」

『我々がやる』その言葉の直後。
彼らは一斉に私を見据えた。

私の知らない世界に見て触れて
私の知らない世界を生きてきた彼ら。
その目はまごう事なき『兵士』のもの。

「誓いはまだ生きているんだ」

私に示された3つの道。

『私が王子を殺す』

『彼らが王子を殺す』

『殺さずに引き渡す』

ブライトさん──否。『部隊長』は
恐らく最後の隊長命令を私に下した。

「"お前"が決めなさい。レノ」
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