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LaundryHeavenly.
第3章 Heavenly.3
「そしたら連れて行けるしね。一人にはしない」
ハイジさんは私の心を見透かしたように
畳み掛けてくる。
「ま、しばらくはこの地にいるんだけどね。王子くん、一度襲った所にはまた現れるから」
「………」
恐ろしいはずのその言葉を
聞き流しつつ、私は俯いた。
従い尽くすのが、奴隷だ。
実際私はそう生きてきた。
だけど……娼婦。
"そういう意味"で
従い尽くすのが勤め。
私のこの体で彼らを悦ばせる?
そんなことできるわけがない。
──ああ、でも。
私の中の私は囁く。
『本心は違うだろう』と。
常に私を気遣ってくれるブライトさん。
無愛想な中にも優しさがあるナノさん。
闇に沈みそうになる心を救ってくれる
明るさを持つハイジさん。
失いすぎた私にとって
彼らの側はこの上なく
居心地がよかったのだ。
『いつまでもここには居られない』
いつしかその現実から目を背け
『この暮らしがずっと続けばいい』
そう願っていたじゃないか。
「さぁて」
「っ……」
急に顔を上向かされ、思考は寸断させられた。
いつの間にか私の真正面まで接近し
床に膝をついていたハイジさんの右手が
私の顎を掴んで、自分の方を向かせたのだ。
「ちょっと喋りすぎちゃった。ごめんね」
けして強い力じゃない。
視線の先にいたのも『いつもどおり』の
屈託ない笑顔を浮かべたハイジさん。
だけど私の心臓は、痛いほど高鳴っていた。
「答え、聞かせてくれるかな。レノちゃん」
直感した。
私に許された『答え』は、一つなのだ。