この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
LaundryHeavenly.
第4章 Heavenly.4
「──あれ。何、それ」
興醒めしたような、呆れたような声が降り注ぐ。
ハッとし、目を見開いた時にはもう遅い。
首筋から顔が、胸からは手が離され…
言うならば『解放された』状態になった。
「嫌ならやめるよ。どうするの?」
「………」
彼の冷静な声が耳に刺さる。
今ならまだ間に合う。
今ならまだ引き返せる。
今ならまだ逃げ出せる。
娼婦になどなれるのか?
そんな覚悟はあるのか?
頭の中でそんな声が響く。
ああ、でも、私は──…
「レノちゃん?」
ハイジさんは呼び掛けるだけで
自分の方を向かせようとしない。
待っているのだ。
私の『答え』を。
脳裏に浮かぶのは、お嬢様の姿。
おてんばで元気で溢れていて
無邪気な笑顔が天使のようで
いつまでも抱き締めていたい。
でも気づくと居なくなっていて
一瞬で変わり果てた姿になって
私の目の前に降ってくる。
ああ、お嬢様。私は…
毎晩繰り返されるあの悪夢に
もう一人では耐えられません
「………」
私は仰向けになり、ハイジさんの焦げ茶色の瞳をまっすぐ見つめた。
ハイジさんの表情は柔らかかった。
しかしその瞳は物語っている。
『早く答えろ』と。
「……ごめんなさい。続けて…ください」
娼婦になる。
本当の意味で、私の心が決まった瞬間だった。