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LaundryHeavenly.
第6章 Heavenly.6
『──、──!レノ!』
────どのくらい、経ったのか。
薄ぼんやりとした空間のなか。
私の真横で、私と手をつないで。
お気に入りだった白いワンピースに身を包んだお嬢様が立っていた。
聞き慣れたその明るい声と
見慣れたその無邪気な笑顔。
それを見た私の顔もほころぶ。
でも瞬時に冷静になった。
これはあの夢だ。
私はいつの間にか寝入ってしまったのだ。
『かけっこしよう!いっくよー!』
ぱっと手を離した直後、駆け出していく背中。
条件反射的に私は後を追いかけた。
──お嬢様。サラサ様、待ってください。
そんなに走ったら、また転んでしまいます。
そんなことを呼び掛けながら。
この後何が起こるのか、知っていながら。
──ほら、お嬢様の姿が消えた。
そして『あの夜』のように
血にまみれた姿で、私の目の前に現れるのだ。
ああ、ほら…言っているそばから。
滴り落ちてきた血。降ってくる骸。
しかし今度は今までとは違った。
悪夢は、絶望を増していたのだ。
『…レノ…、いたいよ…レノ…』
頭の中に直接そんな声が響いた。
乾いて、掠れて、消え入りそうな幼い声が。
こんなことは初めてだった。
以前よりも夢が鮮明になっている…
……いや、いやだ!やめて!!
もうあんな思いをさせないで!!
私…サラ……まを……
…………!
「───レノ!」
「!」
ハッと、目を見開く。
私は寝台に仰向けの状態になっていた。
全身は汗でびしょ濡れ。呼吸も満足にできない。
まるで今まで溺れていたかのようだ。
「…大丈夫か」
「……あ…」
そんな私の頬を包む、大きくてあたたかい掌。
低くて穏やかな、優しい声。
明かりのない暗闇でも、
姿が見えなくても、わかる。
ブライトさんがいた。