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LaundryHeavenly.
第6章 Heavenly.6
「…呼吸を合わせて」
「……、っ……、あ…」
抱き起こされ、導かれるまま、彼に合わせて吸っては吐く動作を繰り返す。
ゆったりとしたその動作。包まれる温もり。
上がった呼吸も、高鳴っていた鼓動も、少しずつ落ち着きを取り戻していった。
「口を開けて」
唇に当たる、ひんやりとした感触。水が入れられたカップだ。
冷たい水が、カラカラに乾いた口腔内から始まり、全身を巡り伝わっていく。
生き返るようなその感覚に私は目を閉じた。
悪夢に魘され目を覚まし、ブライトさんになだめられる。…この流れも、もう何度めだろうか。罪悪感に苛まれる。
それでも、私を包んでくれるゆったりとした暖かさと心地よさは、救いだった。
「ありがとう…ございます。…すみま…せん」
「また魘されたな」
唇に残った水滴が、彼の指の腹で拭われた。
彼が私に触れるときの手は、いつも優しい。
もちろん今もそう。何も変わりはない。
──ただ、ひとつだけ違和があった。
「…血…」
私は自分が思った以上に、鼻が利くらしい。
微かだけど、ブライトさんからは錆びた鉄のような…血のにおいがしたのだ。
こんな事は初めてだった。
ハイジさんを殴り付けた時のもの?
…ちがう。真新しいにおいだ。
暗くてよく見えないけれど
まさか何処かで怪我を?
ならばナノさんを呼ばなければ…
そう言って寝台を降りようとした私を、
ブライトさんは制止した。
「大丈夫だ、心配ない」
「でも……」
「お前が落ち着く方が先だ」
離れかけた体も再び抱き寄せられる。
彼の声には変化はなかった。
すぐそばで聞こえる鼓動も平静なもの。
訝しみつつも、私は再び彼に身を委ねた。