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LaundryHeavenly.
第6章 Heavenly.6
「ハイジが何を言ったかは知らないが、鵜呑みにするな。娼婦になんかならなくていい」
「──!」
それはまさに、最後通告だった。
彼ら45部隊には娼婦─つまり、私は要らない。
長である彼の口から直に告げられてしまった。
「…帰還するまでは此処に居ていい。行くあてが無いのなら、奉公先を斡旋──」
ブライトさんの言葉が耳を通り抜けていく。
呆然自失状態の頭には、全く入ってこない。
『僕らに生きている悦びを思い出させて』
ハイジさんの言葉が甦った。
45部隊の現状。彼らの想い。
茶化してもふざけてもいなかった。
あの時のハイジさんは本気だった。
「ブライトさん…っ、私は…!」
私は眼前のブライトさんより
あの時のハイジさんを信じた。
45部隊に私ができる唯一の報恩。
45部隊に私が居れる唯一の理由。
それは『専属娼婦になる』こと。
それを。それだけを、信じた。
彼らのため。そして…自分のために。
「…娼婦に…なりたいんです!」
「いい加減にしろ!」
ここまで食い下がってくるとは思わなかったのだろう。
ブライトさんはついに声を荒らげた。
初めて浴びせられかけた強圧的な声。
全身が強張る。…でも怯むわけにはいかない。
「ねが……しま……っ」
意思とは関係なくこぼれ落ちる涙。
項垂れている今、それは止めどなく膝へと落ちていく。
拭うことも忘れ、ただただ懇願し続けた。
「……お願いします……っ」
私はもう、一人にはなれない。
あの悪夢も絶望を増した。否。
更に増していくかもしれない。
それに…
私自身にももう、抑えきれないのだ。
私の中に生まれた、『この想い』は。
「──それは本当に『お前』の望みなのか。レノ」
永遠かと錯覚するような長い間のあと。
頭上から注がれたのは、耳に馴染んだ
静かで穏やかな声だった。