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LaundryHeavenly.
第7章 Heavenly.7
──『彼ら』のこと。
そういえば、詳しく知らない。
私がこれから『従い尽くす』場所だ。
知っておきたい。
そう思った私は、木箱に自分の皿を置くと
崩していた足を直し姿勢を正した。
ハイジさんは、そんなに畏まらなくていいよと苦笑しつつ話し始める。
「45部隊が結成されたのはね、バカ王子くんが攻めて来た頃だったかな。だから…まぁ、一年前?言わずもがなだけどうちの頭はブライト。次が僕。末っ子がナノ」
副隊長も居たけど死んじゃった、と
ハイジさんは朝食を口に運びながら
あっさりと付け加えた。
「んー。じゃ、まずは僕の話ね。歳は23。見えないでしょ?生まれは"デタージェント"。分かるよね、平民階級だよ。兵士には志願してなったの。三年前かな?」
喋りにくいし食べづらい、と、絆創膏を剥がしながらハイジさんは話し続けた。
現れた素肌は、昨日打ちのめされたのが嘘のようにきれいになっていて。私は驚きを隠せない。
ナノさんの加療もあってのことだろうけど…『美形は顔の治りが早い』は、気休めではなく事実だったらしい…。
用済みとなった絆創膏は片手で雑に丸められ、
遅れて食べ始めたナノさんの横にポンと置かれた。
「動機が不純でしたよね」
刺のある口調とは反対に、ナノさんはごく自然な動作でそれを手に取ると下衣のポケットにしまう。
ナノさんはハイジさんが食べ始めるまで
朝食も口にしていない。
くだけた会話の裏の、彼らの上下関係の徹底ぶりが見てとれた。
「ははっ、そーそー!よく覚えてたね。"前の仕事より給料安定してた"からでさ!ま、入って三日で大後悔したけどね」
「前の仕事…」
「んー?あれだよ、レノちゃん。女衒。女の子を娼館に売り飛ばす極悪人」
ケラケラと屈託なく笑って見せるハイジさんに、私は返す言葉を失ってしまった。
聞き飽きているらしいナノさんも
うんざりしたような顔と口調で突っ込む。
「…笑って言える話ですか?人身売買ですよ、それ」
「いやいや、僕は誘っただけ。彼女たちはみんな、"自分で決めた"んだよ」
聞き覚えのある台詞。
それが事実なら、この人にとっては
『娼婦にならないか』という申し出も
『検分』も手慣れたことということか…
楽しそうに話す彼の瞳は笑ってはいない。
何が嘘で、何が本当かわからない。
この人は怖い。改めてそう思った。