この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
LaundryHeavenly.
第8章 Heavenly.8
「…失礼します…」
隅っこに立っていようとしたら咎められ
寝台に腰かけるよう命じられてしまった。
もはや慣れ親しんだ場所であるのに
今はこれ以上ないほど居心地が悪い。
同じ空間に平民の方がいて貴族の方がいて
何よりも聖職者の方がこんなに近くにいて
あまつさえ彼らは地面に胡座をかいている。
必然的に私は彼らを見下ろす格好。
こんなこと、本来ならあり得ない。
柔らかいはずの敷布が針の筵のようだ…。
「──以上だ。異議がなければここに署名を」
「、へっ?」
突然話を振られ、間の抜けた声をあげてしまった。緊張のあまり、周りの音が全く耳に届いていなかったのだ。
ブライトさんは手にしていた3~4枚の紙から、一枚だけ色の違うものを抜き取ると、ペンと共に木箱の上に置き私の足元まで差し出した。…が、何のことかわからない私は動けない。
「…聞いていなかったな、レノ」
溜め息混じりに呟かれ血の気が引いた。
専属娼婦の身柄は軍事法で手厚く保護されている。
しかしその恩恵に預かる為には正式な契約が必要。
いま差し出されているのはその契約書で、彼は契約に於いての重要事項書類を読み上げてくれていたのだ。
手間取らせたことの謝罪をしたくても、舌が回らない。
「すっ…すす、すみ、すみま…」
「落ち着け。仕方がないな、じゃあ最初から」
「…あの、ブライトさ…その紙渡してやって、署名だけさせりゃいーんじゃないの?」
私たちのやり取りに、ハイジさんが横から口を挟んだ。彼の隣にいるナノさんも、賛同するように頷いている。
「いや、重要事項目を最初から読み上げたうえで、本人に署名させるのが規定だ」
「そんなの建前だからさあ…端折ろうよ…」
至極当然といった態度で返したブライトさんに対し、真面目すぎだと半ば呆れたように苦笑しながら、ハイジさんは私にペンを持たせてくれた。
「レノちゃんはもう、腹決めてるんだからさ」