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LaundryHeavenly.
第12章 Heavenly.12
「でも…、っあ…」
ナノさんであってナノさんではない。
言おうとしたが咄嗟に口をつぐんだ。
駄目。寝台で起きた事は他言無用だ…。
「大丈夫だよ、それは話していい」
ハイジさんは言う。彼はナノさんが
どんな状態に陥ったかを知っていた。
「でも、"掟"はあるの。僕ら側にもね」
「……」
娼婦、つまり私への負担は少なく。
かつ自分の思い通りにことを運ぶ。
「つまり、僕みたくやんなきゃ」
…彼らしい物言いとその笑みに力が抜けた。
「でも、レノちゃんにはまた驚かされた」
「?」
「…お水は飲めるかな?」
口内に挿された水差しからゆっくりと
水分が体内に染み込まれていく。
「子守唄歌ってんだもん」
あの日の朝。共有テントに足を踏み入れた
ハイジさんとブライトさんが見たものは。
半裸状態で後ろ手に縛られ全身は傷だらけ
顔面は腫れてアザだらけ。満身創痍の私と
その膝で静かな寝息をたてるナノさんの姿。
私は彼に顔を寄せるように上体を屈め
子守唄を口ずさんでいたというのだ。
歌いきったら、また最初から。
何度も何度も、繰り返して。
一目で異常だとわかるその状況に
ハイジさん達は息を飲んだという。
…私自身は、全く覚えていないのだけど。
「…ナノもさ、初めて見る顔してたんだよ」
水差しを壁際の机に置くため
背を向けたハイジさんは小さく呟いた。
「安心しきった顔。ほんと、子供みたいな」
振り向いた彼は苦笑していた。
そして再び椅子に座り直し私を見下ろす。
…表情は真面目なものに一瞬で変化した。
「まだ大丈夫?…少し話してもいいかな」
聞いて欲しいことがある、と彼は続けた。
もちろん頷いた。断る理由なんか…ない。
「…これから話すことは全部本当の話だよ」
「……」
私は知ることとなる。彼らの『真実』の姿を。