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LaundryHeavenly.
第12章 Heavenly.12


何を見たのか。それはもう誰にもわからない。
ただ『その時』彼ら兄弟の父親が見たものは。

血の海の中人形のように横たわる長男と
側に座り込みガタガタと震える半裸の娘
そして兄の返り血を浴び立ち尽くす次男。

「お兄ちゃんは裸だった。大体想像つくよね」
「……」
「その後の総監、大変だったんだよー」

ハイジさんがいうには。
息子同士で刃傷沙汰になったなど
世間に知れたら大恥。

そのうえ流れで、自分達が娘にしてきた事も
明るみに出るかもしれない。

方々手を尽くして揉み消し
最終的に『屋敷に入った暴漢のせい』にした。

そして、この現状。

自分の分身ですらあったご自慢の長男を
総監は永遠に失うことになってしまった。

その引き金は長男と共に散々っぱら弄んだ娘と
その娘に心底惚れた、存在すら忘れかけた次男

「ざまあみろだよね」ハイジさんは苦笑したが
私は返す言葉がなかった。

ナノさんと……お姉さんの気持ちを思うと
とてもじゃないけれどいたたまれなかった。

あの夜ナノさんが口にした
言葉の意味もいま分かった。

『こわがらないで』

『兄さんはこない』

『やっつけたんだ』


…そういうことだったのだ。


「もっと大変だったのはその後」

見るとハイジさんの表情は
神妙なものに変化していた。

これ以上の衝撃はきっとないだろう。
私のそんな心中はあっさり覆された。

先の『何を見たか誰にも分からない』
その真意が、明らかになった瞬間に。


「お姉ちゃん、首くくっちゃったんだ」
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